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.your side
「とりあえず、話がしたいので飲み直しましょうよ」
「アースクエイクのお陰で今日はもうアルコールは無理です」
ゼロと読んでくれと言った彼がやっぱりアブ・ジン・スキーの別名知ってたんですねと笑う。あなたもこの間のカクテルの意味を知っていたのに知らないふりしてたでしょうと笑いながら人通りのない道を眺める。洗いざらい、とまではいかないけれど言いたいことを吐けて清々しい気持ちだ。
「飲み直してもいいけれど、ワインしかありませんよ」
「Aの家の飲みものはどれも高価なので気が引けます」
父から送られてくるだけなので大したことは無いし、消費して貰えるならか嬉しい限りだ。自宅のドアを開き、彼を招き入れる。
ドアを閉めてこの前と同じようにリビングに腰掛けてもらい、その間にお紅茶とワインを運ぶ。やっぱりリビングで彼はわたしの手からそれらを取って机に置いてくれる。わたしはお紅茶を、彼はワインを飲み少し落ち着いたあと話し始めようとした。
「さて、どこから話しましょうか」
「わたしはあなたの素性も接触してきた理由は聞かなくていいですよ。大方探偵業か他の何かの情報収集でしょうから」
賢いですねと肯定も否定もせず彼は返事をした。何にせよ危険な人ではないだろうからいつか知れたらそれでいい。すると彼は私に腕時計を奪った理由を尋ねた。
「……幼稚だけど、おまじないみたいなものです」
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作者名:ism | 作成日時:2018年8月11日 19時