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.your side
「……あ、寝てる」
無理を行って乗せてもらった安室さんの家へのタクシーに乗って数分とたたないうちに、彼は目を閉じて寝息を立てはじめた。やっぱり申し訳ないなと思いながら窓にもたれる寝顔を眺める。未だに29歳なのか疑ってしまうほど幼い顔なので、疲れさせてしまったことにますます罪悪感を感じた。
運転席から着きましたよと声がかかりわたしも彼を揺さぶり起こそうとするも、むにゃむにゃ何かを言うだけだ。
「すみません、この人家に連れて行ったらさっき乗った駅までもう一度乗せていただいてもいいですか」
さすがに歩いてくれないと困る。ほら、起きてくださいと腕時計のかかった左手に触れる。どうしても起きない様子だったので、思い切って名前を呼んだ。
「……安室透さん」
「……ぼく、寝てましたか」
ばっちり寝ていましたよと苦笑し、安室さんの家の前なのでこのまま降りて下さいと頼む。この人はしっかりしているから意識さえあれば部屋へ送る必要もないだろう。
「……わかりました。おやすみなさい、A」
「次はバーで会いましょうね」
彼の姿が見えなくなったのを確認し、車を出すように頼む。さっきまで彼に振っていた右手には彼の左手から盗った腕時計が入っていた。
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作者名:ism | 作成日時:2018年8月11日 19時