［安.室.透］アースクエイク (ページ22)

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.toru's side

「……透？」
「……、A、どうしてここに」

息が止まるかと思った。一瞬血の気が引いたが次は焦りがやってきて体の芯が熱くなるのを感じる。宗教組織の爆破テロについての会議、盗聴、潜伏、そして危険物の回収。それから首謀者であったAさんの元恋人への尋問とデスクワーク。その夜眠ったのかすら分からなくなるほどの業務を3週間も前線でこなし、ようやく家へ帰れるようになった僕の目の前にはなぜかAさんがいた。

「わたしは少しお買い物に行っていたんです。……あなたはようやく帰ってこれたのですね」
「ええ、連絡を入れられなくてごめんなさい。刑事沙汰になりそうだったので似合わないスーツを着て顔出しに行っていました」

Aさんが待つのは安室透ただ一人だ。降谷零の格好をして安室透をする僕は何と滑稽なことだろう。しかし僕は事件のため利用したAさんであったが、事件は殆ど収束に近くAさんと接触する必要が無いに等しいことに気づいた。

もう無垢なAさんを騙す必要はないし、事件が終わる前にお得意の罠も回収しておかなければ。別れ際の駅で僕は、Aさんを引き止めた。

「A」
「なあに？」
「……少し話がしたいです。次はあのバーで会いませんか？」

Aさんが少し唇を噛むようなそぶりを見せた気がしたが、気のせいだったのか瞬きした次にはわかりましたと笑っていた。