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.toru's side
「……は?明日から?」
Aさんの元恋人に盗聴器を仕掛け10数日、ようやく言質が取れた。やはり宗教絡みのテロ計画だったようだが、僕の予想以上に計画が進んでいるようだった。Aさん親娘が渡した数千万円はここに流れていた訳だ。
何が困るかというと、この手の事件の処理がお得意の公安に仕事が押し付けられるところだ。もちろん僕は前線で働くことになるのでポアロの仕事も私立探偵の仕事も全てキャンセルする羽目になった。
勿論公安以外の帰還の働きも優秀ですぐに火薬等の場所を見つけたそうだ。明日から僕は暫く公安の降谷零として働くこととなる。
まだキャンセルしていない予定があることに気づいた僕は、渋々電話をかけた。
「……A?すみません、時間勝負の探偵の仕事が入ってしまって、明日から暫く会えないんです」
「……つまり、今週末会う予定だったのは後ろ倒しですね。大丈夫、怪我さえしなければ私は怒りませんよ」
Aさんが居たからこそこの事件は露見したんだなあというありがたさと、こんなにも穏やかなAさんを騙したのだという実感が襲いかかる。大丈夫、正義のためだ。胸なんて少しも痛まない。
「……いってらっしゃい、透」
「いってきます、A」
安室透の皮を被ったまま電話を切った。
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作者名:ism | 作成日時:2018年8月11日 19時