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.toru's side
「わざわざ着いてきてもらってすみません、ありがとうございました」
粘ってとっさに出た目的地まで案内して貰い、自分の靴紐が解けたと言って相手の靴や服に盗聴器を仕掛けることもできた。これで言質が取れれば仕事の丸投げだってできるだろう、達成感を胸に自宅への電車へ乗った。
「……あ、と、透、こんばんは」
「A、奇遇ですね」
降谷零の仕事をした日に安室透の顔をするのは結構きつい。ここでかと思いながら何をしていたのか尋ねた。
「公開裁判を見に行って、その帰りです」
「なるほど、3回生とはいえ法学部生は大変ですね」
何を間違っても、頭を撫でたりはしてはいけない。梓さんが僕と交際していると勘繰られフレーミングした時のようになると笑えない。いつもよりボロを出さないよう気を使いながら、結局彼女の家の最寄り駅へ着いた。
「透、この駅に用事は無いんでしょう?」
「送ろうかと思って」
そういうのは今しなくていいだろう、とも想うけれどお節介を焼いてしまうのが自分の欠点でもある。素直に送られるつもりらしいAさんを車道から遠ざけて自宅まで送った。
「透、疲れてないですか?」
「僕は大丈夫ですよ」
白々しい噓ですねと笑いながら僕に小さな袋を渡す。帰りに美味しいお紅茶を買ってきたので帰ってから飲んでみてくださいとAさんは言った。
帰宅後飲んだ紅茶はたしかに美味しかった。
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作者名:ism | 作成日時:2018年8月11日 19時