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.your side
「ありがとうございます」
なんのお礼ですか、と何だかおかしく思いながらも改めてよろしくお願いしますと小さく礼をした。まさか安室さんに告白されるだなんて。自分でも驚くほど喜びは大きく、まじまじと安室さんの顔を見つめてしまう。
「何見てるんですか」
「何だかぼうっとしてしまって、それにしてもバーで告白だなんて20歳半ばにして洒落すぎていて恥ずかしいです」
大学3回生、たった23年の人生でバーで交際を申し込まれるのは照れくさい。けれど告白した方もした方で背伸びしてるみたいですねと笑うと安室さんは目を丸くして、僕はそんなに若くありませんよと苦笑した。
「えっ、何歳なんですか」
「来年で而立を迎えます」
29歳。愛嬌のある幼い顔からわたしと同じくらいかもしかすると歳下なのかもしれないと思っていたので中々に驚く数字だ。
もう一度その童顔を見て首を傾げると、安室さんは何がおかしいんですかと頬を膨らませた。
「そういう表情も見ていると、本当に29歳なのか疑わしく思います」
「こら、仮にも歳上にそんなこと言って」
そう言いながら安室さんは残ったカクテルを口にし、もう遅いので送りましょうと席を立った。それにならってわたしも荷物を手に持ち、安室さんがドアを押さえてくれたり、車道側を率先して歩いてくれることを恥ずかしくなりながら帰路を辿った。
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作者名:ism | 作成日時:2018年8月11日 19時