あれ？誤魔化せる？

個展 ページ40

「新堂すみれは個展を持ってまして、まずそこに向かいましょう。いなかったら、自宅にいると思いますが……」

アパートに着いて自転車を置いた俺は念のため着替えて常盤さんにもらったブローチを胸に付けて出発した。

ブローチを付けたのは単なるオシャレ、深い意味はない。この頃外出中は付けてる。

「あ、運転手さん、新堂すみれさんって分かります？画家の……」

「あぁ！ すみれさんだねぇ！ 私はよく彼女の絵を観に行っているよ。お二人もかい？」

「そうなんです。彼女の絵には興味がありまして……」

同意するよう水谷に目で促す。

「ついでに会えると嬉しいなって……」

ダーチェル前に呼んだタクシーに俺と水谷は乗り込み運転手に場所を指定した。

偶然にもファンで助かった。
意外に水谷に言葉を合わせる能力があったことにも助かっているが。

ーー

「……駄目ね」

佐藤刑事はタイヤ跡を見付け辺りをくまなく探したが手掛かりは掴めない。

こうしてる間にも……と焦る中、上司から電話が掛かってきた。

「はい、佐藤です」

『佐藤くん、悪いが今は君の力も借りたいんだ。済まないが、その事件は他の刑事に任せて君は戻りなさい』

「し、しかし！」

『佐藤』

「っ……わかりました」

ーー

「着いたよ。ここがすみれさんの個展だ」

「ありがとうございます。水谷さん、先に行っててください」

「……うん……」

「運転手さん、すいませんけど待っていてくれませんか？ タクシーを取れるかわかりませんし、勿論延滞料は払います」

「そんくらい構わないよ。私もここからあの絵を眺めてるから終わったらノックしてくれ」

中々いい運転手だ、やはりファンなだけある。

ーー

新作絵画展と書かれた見札に従い中に入り水谷と合流し係員に訪ねた。

「すいません。新堂すみれさんはいますか？」

「お客様、アポはありますか？」

やっぱりアポが必要か。水谷に目配せを送る。

『あとは貴方の仕事』

それを理解したか水谷が係員と話す。

「すいませんが新堂すみれさんに伝えてくれませんか？」

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