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「……僕が怒りを顕にしないことが、それ程までに不思議でございましょうか。確かに、僕も同輩様も皆、元は人でございました。しかし……今は、違いましょう?死神……生者様を死へと誘う、決して人ならざるもの。そんな、生者様方にとっては神に等しい存在である我々が、まるで人のように過剰な感情までもを持ち合わせるだなんて……非効率だとは、お思いになりませんか?……いえ。聞くだけ無駄、ですね。そもそも、浪漫などという非効率の権化である僕の話に、あなた様がまともに取り合って下さる訳がございませんから」

「死を定められた君を慰め、慈しみ、そして出来うる限り安らかな眠りを御提供しよう、と。僕の毎度の長話の理由(わけ)など、この程度にございます。後は……ええ。君の死が惜しく、永遠に共に居たいなどという想いが、抑えきれなくなってしまう……そんなことも、ないとは言い切れませんね。ふふ」


「僕の(だんま)りが珍しくございますか、同輩様。……まだ一言だけではありませんか、どうかそんな竜のような目をなさらないで下さい。……いえいえ、決してそんなことは。落ち込んでいる、というと少々語弊がございますが……ですが、ね。そろそろ美しき君への形様々なラブコールも、底をついてきてしまっていまして。どうしたものか、と…………ふふ」


「……“おまえの物言いは遠回り過ぎて分かりにくい”、とでも言いたげなお顔をしていらしますね。ええ、全くその通りにございます。……しかし……死神たるもの、生者様の御相手とならば、時には洒落っ気付くこと(くゆる情緒をひた隠すこと)も必要にはなりましょう?なればこその冥土(ごくらく)、なればこその(ゆめ)にございますから、ええ」


「"死は救いであるか"、と?……あなた様もそう、問われますか。ええ、その問には僕はよく、こう答えるのですが……どうか御心を乱さずにお聴き下さい。…………それは僕などには、分かりません。死とは救いであり、また救いではなく。それは旅路の終わりであり、或いは線路の始まりであり、また或いはただの散歩の通過点にも過ぎないのです。延々と増え続ける数多の認識の中から、どれを選び手に取るか。そんな一存だけで変わる広義な事柄を語るなんて、地を這う猫になど…………いえ。常に空と共にある烏には、必要のないことでございましょう」






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作者名:玲楓(れいふう) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年9月25日 20時

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