五奇人ともう1つの物語 (ページ44)

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再戦(2) ページ44

桃李目線

僕は、中学生の時からfineに憧れていた。
その時は、アイドルについてはそこまで知らなかったけど、お父さんとお母さんに天祥院財閥の跡取りである英智様は夢ノ咲学院でアイドルをしているらしいと教えられて、両親と一緒に見に行った初めてのライブから、fineに憧れを抱いた。

ドリフェスで、その時はまだ無名だったfineが名前も知らないユニットをあっさりと破ったのがすごく印象的だった。
あの時は、一人一人の実力があるのになぜ無名なのだろうかと家で何度も考えたものだ。

どんどんとfineにハマって、応援して、ライブに行ったり、握手会に参加したりするうちに、夢ノ咲学院の中に六奇人という人たちがいて、その人たちを今の夢ノ咲が応援していると知った時には、何故、fineでは無いのかと1人で憤りを感じていた。

やがて、その六奇人が五奇人になって、夢ノ咲が腐敗している原因であるというのを知って、夢ノ咲の悪で怪物のような強さを持つ五奇人相手に次々と勝利を収めていくfineがカッコよくて、fineなら誰が相手でも勝てると思ってた。
fineは最強なんだって。

だから、トリスタにDDDで負けた時、本当は僅かだが勝てていて、会長の体調が悪かったから延長戦が出来なかっただけなんだって、延長戦をしていたらトリスタに圧勝していたんだって、声を大にして言いたかった。
誰かに負けたことを否定して欲しかったし、今のfineが最強であることを肯定して欲しかった。

そのせいか、楓奏先輩がfineに入るかも...となった時に断固として拒否したし、楓奏先輩達Sophiaとドリフェスで対戦することになった時、絶対王者、fineとして、絶対勝たなければならないと感じた。

それは苦労してやっと入ることのできた大好きなfineの解散がかかっていたのもあるだろう。
しかし、僕はfineしかろくに知らないまま、アイドルの世界に足を踏み入れて、王者であるfineの甘い汁ばかり吸っていたことに対して、自分でも後ろめたさがあったということもあるのだと思う。

頑なにSophiaのことを貶して、他の人のことを貶して、そうすることでしか今の自分のDDDで負けた時のイライラした気持ちを発散することが出来なくて。

だから、楓奏先輩が言った言葉に反論できなかった時に何も言えなくて、子供のように癇癪を起こしてしまった。

流石に悪かったと思って、その事についてドリフェス前に謝った時、まさか、楓奏先輩からも謝られるとは思わなかった。

...to be continued