＿＿＿ ページ26
SIDE__Yabu
俺は、そこそこに力がある貴族の息子だった。
強く逞しい父が居て。優しく美しい母が居て。頼れる兄と姉が居て。
この上なく恵まれた人間《だった》と思う。
でも、そんな幸せ、長くは続かないもので。
現実は、突然俺達に牙を剥いた。
『宏太！お前だけでも逃げろ！！』
目の前は火の海だった。
昨日まであった、どこよりも落ち着く、心の拠り所がもう無い。
昨日まで居た、誰よりも大好きな、笑い合える家族がもう居ない。
昨日まで当たり前だった、幸せすぎた日常が、もうその欠片すら無い。
今まで高い所に居たからか、落ちた時の衝撃は酷く痛く、辛かった。
ねぇ、なんでこんなに酷いことするの。
俺、何も悪いことしてないよ。
困ってる人のことは助けたし、
親孝行だってしてたつもりだった。
人を蔑んだこともなければ、
罵ったことだってないのに。
『なんでｯｯ……！』
俺、これからどうしたらいいの…？
もうやだ。死にたい。
それだけしか、思えなかった。
だから、もう何をされても良いと思えた。
『私は神の子を作るんです。』
『……協力してくれますよね？
まぁ、もう帰る場所も何も無いガキに拒否権なんてありませんけど。』
拒否権なんて無くたっていいよ。もう、何もかも諦めてるから。
そこからの日は、地獄でもあり、幸せへの道でもあった。
守らなきゃって、助けなきゃって思える人が出来た。
誰かを守れるかもしれない力が手に入った。
酷い痛み、副作用、自分が自分じゃなくなる恐怖に飲み込まれそうだった。
守れなかった人が目の前で動かなくなるのが辛くてしょうがなかった。
それでも、耐えるしかなかった。
今まで守られてきた分、誰かを守れるのが何よりも嬉しかったから。
不器用ながらに助けを求めて、差し伸べてくれた手を握れるだけで。
お兄ちゃん！って笑って、俺に幼い笑顔を向けてくれるだけで。
自分を犠牲にするなんてこと、余裕で出来たんだ。
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柑橘類。(プロフ) - 茶巳さん» 読んでくださりありがとうございます…！更新サボってすいませんでした…(土下座)読み返してあげてください…でもミスはそっとしといてあげてください…← (2020年7月21日 0時) (
レス) id: 9e47427641 (このIDを非表示/違反報告)
茶巳(プロフ) - 初めまして！毎日更新してないかなーって見にくるぐらいこの作品が好きでした。まさか最後に記憶をなくすとは、、、とても読み応えがあり面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！何度も読み返そうと思います(^○^) (2020年7月20日 23時) (レス) id: 560570cdba (このIDを非表示/違反報告)
柑橘類。(プロフ) - rengeさん» 読んでくださりありがとうございます！皆幸せになれるように頑張ったつもり…です！← (2020年7月20日 20時) (レス) id: 9e47427641 (このIDを非表示/違反報告)
renge(プロフ) - 予想外の展開に驚きました。話の構成がすごいですね！みんな幸せになってほしい。素敵なお話をありがとうございます！ (2020年7月20日 19時) (レス) id: 8b7957125a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柑橘類。 | 作成日時：2020年5月22日 18時
