Alife (ページ17)

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由紀side

とりあえずのあちゃんをこの騒ぎの外に出さないと。

このままこんなとこに座っていたら、飛び火でケガもしかねない。だけど、どうやってもこの野次馬の厚い層を抜けれそうにない。

抜ける途中で押しつぶされて余計に危険な気がした

とりあえずこの騒ぎが落ち着かないことにはっと思って、腰を上げようとした時

「なにやってる！！院内だぞ！！」

ロビー中に響き渡った大きな声で一瞬の静粛が流れた

野次馬がなんだなんだと一斉に頭を振る方向に視線を向ける

ああ。学会から丁度戻られたのか。

そこにいたのは院長と、その後ろには羽山先生と井川先生。

井川先生。今回は学会お供させてもらえたんだ。これでことも片付くと一気に気が抜けていく

胸ぐらをつかんでいた男の方も、いったい誰なのかと、この空気に偉い人であることは察しがつくだろう

すぐにはっと気づいた顔をした羽山先生が警備を呼ぶように指示を出して、
それに気づいた井山先生も加わって

集まった患者さんたちを笑顔で解散させていく

羽山先生はいつもナースたちを落としているだとかなんだとかと有名なあきらかな作り笑顔でご婦人たちに接してる

さすが、笑昇り詰めているだけはあると思う

警備員に両腕をつかまれている暴れていた患者さんの方に仕事用の笑顔を浮かべて話しかけに来た院長が、
私の隣に目を向けた瞬間血相を変えて飛んでくる

「っおい！大丈夫かっ」
とのあちゃんに駆け寄ってきた院長に

「けがはないようです。」

と伝えれば、安堵のため息を大きくついてありがとう柴田さんと目を見て言われる

あの沖田先生との一件以来私の名前はしっかり覚えられたようだ。

「いえ。」と返事をすれば院長はのあちゃんに向き直って

「お父さんちょっと話してくるから。ちょっと待っててな。」

と肩をさすりながら言って立ち上がって背広を羽織りなおした。

いつもの冷淡なイメージとは違う、学会では見ない表情だなと思った

「のあ！！」

その時響いた声にのあちゃんの顔が上がる

ああ、もう安心だね。良かった。