14:追求 ページ15
「バケゆか……九血鬼……」
聞いたことある、名前。それもやっぱり混ぜるな危険メンバーの名前だ。
無意識にに口の中でその名前を転がすと、「知ってるのかな?」とバケゆかさんが確認するように問うた。
それにしてもこの人、男の人にしては随分とかわいい服装をーーいや、女の人の服を着ている?
「あのさ、megaちゃんはさぁ、なんで抱きついてるの?」
近くで見ても声を聞いても女の人か男の人かわからない、九血鬼さんはいつまでも私を抱きしめたまま離れようとしないmegaさんに疑問する。
少し袖の余った黒と赤紫色のボーダーの服が、強く印象に残る。
「……かわいそうだから」
ぽつりとmegaさんの呟きに、バケゆかさんと九血鬼さんの目の色が変わる。
お互いに顔を見合わせて、表情を一気に険しく変えた。
険しい顔のまま、九血鬼さんが私の前に正座してじっと私を覗き込むように見つめる。
「……あのさ、灯ちゃん?だっけ?君のお父さんとお母さんのこと、聴かせてほしいな」
私を見つめる一対の紅い瞳が、心の内を見透かすように細められた。
「……別に、少し厳しいだけだよ。普通の人」
「どんな風に厳しいの?」
「……少し、きつめに怒る」
「へぇ、どのくらい?」
「……」
その紅い視線に耐えられなくて若干目を逸らしながら、その質問に答えると、更に九血鬼さんは問いを重ねていく。
ついには私も閉口せざるを得なくなって、口をすぼめたまま黙り込んでしまう。
九血鬼さんは顔から微笑みを消して、本格的に私を追い詰める姿勢になる。
「この事は話せない?」
「……」
「口止めされてる?それとも言わない理由があるの?」
「……」
「言うと“ 怒られる ”、とか?」
「ッ……」
手品のタネがバレてしまったときのように言えない「理由」を暴かれ、ギクリと固まってしまう。
その反応を見て、とりなんさんははぁと深いため息をついて、腕組みをしながら宙を睨み、バケゆかさんは眉間のシワをより深くする。
九血鬼さんはしばらく自身のスマホの画面を触った後、とある写真を掲げて見せた。
そこには、無数のあざで青黒く彩られた腕。
「これ、灯ちゃんの腕なんだけど、これってお父さんとお母さんの「叱責」に関係ある?」
ダラダラと冷や汗が垂れる感覚。
俯いたまま言葉を失って、どうすべきか考えなきゃいけないのに、全く何も考えられない。
「……私が、悪いの」
ようやく吐き出せた言葉は、状況をより悪くするものだった。
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作者名:あんぴーなっつ x他1人 | 作成日時:2019年3月23日 14時