4、私の、進むべき路 ページ6
「えーおまえらも三年ということで！！本格的に将来を考えていく時期だ！！」
進路指導。高校進学へ向けての準備を整える授業だ。
妙な気迫を持った先生が、手元のプリントの山を持って教卓を叩く。びっくりした。
「今から進路希望のプリントを配るが皆！！！」
それから手に持ったプリントをばら撒いて、気の抜けた声でこう言い放った。
「だいたいヒーロー科志望だよね」
……私はヒーロー科志望じゃないんで本当にやめてほしい。
みんなそれに肯定するようにそれぞれの個性を出している……うるさいな。
苦手な進路指導の時間に早速憂いていると、私の二席前からクラスを嘲るような声が発せられる。
「せんせえー『皆』とか一緒くたにすんなよ！俺はこんな“ 没個性 ”共と仲良く底辺なんざ行かねー、よ」
……爆豪勝己くん。運動も勉強も個性もすごい、ゲームでいうとチート？って感じの人。
ただものすごく性格が悪いのがたまに傷というか、勿体ないというか、私はすごく苦手。
その完全に見下す態度にそりゃねーよだとかクラスがまた沸くけど、先生の一言で雰囲気が変わる。
「あー確か爆豪は……『雄英高』志望だったな」
雄英高校。多くの有名なヒーローが卒業している、数あるヒーロー科の中でもトップクラスの国立高校。
実は消太さんも雄英を卒業してて、今は雄英で先生をやっている。
なんか、高額納税者ランキングに名を刻むとかみみっちぃことを高らかに宣言する爆豪くんも、先生の次の余計な一言で黙る。
「そいやあ緑谷も雄英志望だったな」
あっ、空気が変わった。
クラス中が縮毛の彼を小馬鹿にするような表情に変わって、どっと笑いが起こる。
緑谷出久くん。今の時代じゃ珍しい無個性の男の子。
早速爆豪くんにどやされている緑谷くんが、少しかわいそうになってチラリと視線を送る。
「ただ…小さい頃からの目標なんだ…それにその…やってみないとわかんないし…」
、
小さい頃からの、目標。夢。
あんな風に馬鹿にされても、まだ諦めない揺るがない覚悟があるんだ。
なんでもできる爆豪くん。
個性すらない緑谷くん。
(いいなぁ)
正反対のような二人だけど、私にはどちらもきらきらと輝いて見えた。
あんな個性があったら、私も胸を張ってヒーローを目指せたのかな
むしろ無個性だったら、私は普通の女の子として生きれたのかな
私、は、
(……近い範囲で行ける公立を探そう。お金かからないし)
……私には、もう見れない夢だった。
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作者名：あんぴーなっつ | 作成日時：2018年10月8日 19時
