12、「木偶の坊」より、もっと ページ14
「ったく何度も個性を使わすなよ……俺はドライアイなんだ！」
キリッとした顔で拍子抜けするようなことを言う消太さん。
個性すごいのにもったいないよなぁ……個性すごいのに。
「時間がもったいない。次準備しろ」
爆豪くんを解放した消太さんが、また気怠げに戻って残りの生徒を捌き始める。
指を抑えながら、私に向き直った緑谷くんが、私に微笑んだ。
「あ、あのさ！芽吹Aさんだよね？中三のとき同じクラスだった」
「えっ、あ、うん」
緑谷くんマジか、この地味女のことを認識してくれていたなんて！
感動と動揺でコミュ障を発症した私は、カタコトに言葉を捻り出す。
「びっくりした、芽吹さんも雄英受けてたんだね！」
「ん……」
ごめんなさい受けてないようなもんです。
純粋な緑谷くんの光オーラがグサグサと心に突き刺さる。
ちょうどそのとき、向こうから茶髪の女の子が走ってきて、緑谷くんの指を見てうわぁと声を漏らした。
「指大丈夫？」
「あ…うん…」
それにさっきの私のようにたじたじに答える緑谷くん。
ちょうどその時にボール投げを全員が終えたらしく、私たちは次の種目へと移った。
＊
「んじゃパパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」
端末を持った消太さんの言葉で、また空気がピリッと張るのがわかる。
まぁこの中で除籍になるのは間違いなく超人記録のない私。
消太さんはどうするんだろう……私を除籍には出来ないし、かといって不用意に嘘をつく人でもない。
「ちなみに除籍はウソな」
嘘つくんかーい！！
心の中で売れない芸人みたいなツッコミをかます。
「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
ぽかーんとしているみんなをハッと嘲笑する消太さん。
「はーーー！！！？？」
「あんなのウソに決まってるじゃない……ちょっと考えればわかりますわ」
隣で叫び出すメガネの人と茶髪の女の子と緑谷くん。うわ、緑谷くん残像出てる。
それを呆れたようにに諭すポニーテールの女の子。
消太さん途中まで本気の目してたけどなぁ……
ちなみに結果は、やっぱり私が最下位。
爆豪くんが見下している緑谷くんよりも、更に下の存在だ。
それでも、みんなと肩を並べてここに居る。
(やっぱり、緑谷くんは木偶の坊なんかじゃないよ)
教室に帰るまでの道のりで、保健室利用書を持って歩く緑谷くんの背中を見て、私は痛む胸を押さえた。
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作者名：あんぴーなっつ | 作成日時：2018年10月8日 19時
