【ヒロアカ】どうか、この霧を晴らして (ページ2)

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1、とある少女の監獄ページ2

何重にも張られたセキュリティーシステムを潜りながら、壁も天井も白い、リノリウムの廊下を歩く。

この場所は、ヒーロー協会の本部の地下にある個性研究所だかなんだかで、普段であればたかがプロヒーローの俺では立ち入れない区域だ。

じゃあなんでこんなところを歩いているのかというと、他でもないこの地下施設に招待を受けたからだ。

いくら侵入者を警戒するといったって、この長い区域に定期的に危険物センサーだとか顔認証システムだとかを設置するのは、実に非合理的である。

やるならまとめてやってくれ。

『此処より先は関係者以外立ち入り禁止です。会員証か入室許可証をご提示ください』

やっと着いたか。

白塗りの壁と同じく気味の悪いほど白い扉。

鋼鉄のそれは、確か耐熱だか耐爆だか忘れたが、とにかく日本で一二を争うほどの頑丈さを誇る扉だったはずだ。

俺はポケットに入れていた入室許可証なるものを取り出し、扉の横についているカードリーダーにかざした。

『……プロヒーローイレイザーヘッド、入室許可証を確認。ロックを解除します』

ガシャン、と大袈裟なほどの音が響いて、目の前の扉の赤いランプが青に変わる。

それを合図にドアが左右に掃けて実験施設が現れる。

「お待ちしておりました、イレイザーヘッド。さぁ中へ」

出迎えたのは、相変わらず真っ白な白衣に身を包んだ男。

言われるがまま室内へと入ると、背後であの大袈裟な扉が閉まる音がした。

いかにも几帳面そうな七三分けの男は、俺を迎え入れると薄い透明のファイルを手渡してきた。

「こちらが、例の少女の研究資料です」

例の少女。そう、俺は一週間ほど前に起きた凄惨な事故の犯人のお目付役になるためにここへ来たのだ。

「その少女は」

「こちらです」

ある程度資料に目を通すと、その少女の元へと向かう。

施設のある一角に、またセキュリティーで守られている部屋があり、そのカードリーダーに男が首から下げた名札をかざすとロックが解除される。

その扉の向こうは、監視室だった。

アクリル板で仕切られた白い部屋の中央で、膝を抱えうずくまる少女がいた。

「芽吹 A」

ぽつり、と資料にあった名前を呟くと、少女はーーゆっくりと顔を上げた。

酷く、やつれた、暗い瞳。

右目を眼帯で覆い、手のひらに黒い手袋をはめた少女。

まだ4歳の少女が、する目ではなかった。