人通り ―People― ページ10
「サングレが珍しく女子を連れて来たと思って、ちょっと期待したんだけど……馬鹿みたいじゃん」
はぁ、と再び大きなため息をつき、王子はアリスを見下ろした。
「あぁ、ごめん。僕は王子って呼ばれてる。適当に呼んでくれれば良いから」
「は、はぁ……」
「ちょっ、テンション変わり過ぎじゃない!? さっすが、男嫌いなだけあるなー」
隣の黒いうさ耳の青年は、やれやれといった風に首を振ると、アリスにニカッと微笑んでみせた。
「俺は、ヴェラーダ! なんだけど、あんまこの名前気に入ってないし、気軽にヴェルで良いよ!よろしくねアリスちゃん!!」
「……あ、あの、僕男の子で……」
「良いの良いの、可愛いんだから女の子扱いさせてよ! それにほら」
ヴェルはしゃがみ込み、アリスにそっと耳を寄せて囁いた。
「王子の気嫌が悪くなるのを、ちょっとでもマシにするためにも、ね?」
「……わ、分かりました」
初対面で相手の気分を害する事は、その後の自分の身の危険にも繋がると知っているアリスは素直に頷く。
「それで、サングレくんはこの子とどこで会ったの?」
人目があるからか、通常の笑顔に戻り王子は訊ねる。サングレは眉を寄せて頭を掻いた。
「……こいつに言わせりゃ、ちょっとした恩ってやつだ。……今、時間あるか?」
「俺はあるけど、王子様はどう? 王政で忙しいんじゃないの?」
「忙しかったらこんな所には来てないよ。王政は父さんの仕事だろ」
肩をすくめて答えた王子は、アリスに気遣うような視線を向ける。
「さっきも言ったけど、この国の子じゃなさそうだよね。珍しい髪色をしてるからさ」
「えっ……珍しいですか?」
「確かに、この国で金髪ってあんま見ないよね。俺らが変わった色してるから目立たないけどさ」
よく見ると、通行人の髪色には、赤や茶系の色が多かった。アリスと同じ金色の髪をした王子や黒髪のヴェルは、恐らく異国の出身だろう。サングレの赤っぽい茶髪だけは、彼がこの国出身である事を証明していた。
「とりあえず、ここじゃ話しにくいんだ。どっか別の場所に行こうぜ」
その髪と顔を隠すように、フードを被ったサングレが言うと、二人は顔を見合わせる。
「え、何々!? すっごい冒険の予感がするんだけど!!」
「冒険って、あんなのはもう懲り懲りだよ……。場所を変えるくらい難しい話なの?」
「ああ。お前らには犯人探しをして欲しいんだ」
王子とヴェルは、きょとんとした表情になった。
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