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知人 ―Crony― ページ9

青年はかがんでアリスの顔を眺めた。

「ねぇ、君の名前を教えてくれないかな?」「え……名前、ですか?」
「うん。可愛い子の名前は知りたいじゃない?」

教えてよ、とにこにこ笑う彼は、人が好さそうに見えた。何よりサングレの友人なのだから、教えても悪用される事はないだろう、とアリスは口を開く。

「えっと……アリスといいます」
「へぇ、アリスちゃん? 顔だけじゃなくて名前も可愛いんだね!」
「え、あの……」

どこから来たの? 君みたいな可愛い子、この辺では見ないね。サングレとはどういう関係なの?と繰り返される質問に、アリスが困惑していると、誰かが二人の間に飛び込んで来た。

「はいはーい、ストップストップー!! 王子、初対面なのに、質問攻めにしてどうすんの!! アリスちゃん困っちゃってんじゃん」

大丈夫だった? とアリスを覗き込んだのは、黒のうさ耳パーカーを羽織った若者だった。

「あぁ……ごめん。初めて見るくらいの美少女だったから、つい緊張しちゃって」
「緊張なんてしてないくせに! 女の子と見れば見境ないんだから、もー……」

大きくため息をつく若者を、複雑な思いで眺めるサングレ。

「あ、あの……」
「ごめんねアリスちゃん。困らせるつもりはなかったんだ。お詫びといってはなんだけど、この後時間ある? もう少し話したいなと思って」
「そんな事言って、アリスちゃんとデートしたいだけでしょ!?」

アリスの言葉は若者の大きな声に掻き消されそうになり、アリスは「あの……!!」と声を出す。

「ぼ……僕、男子です。……勘違いされてるようですが」

「……は?」

そう声を上げたのが誰なのか、アリスには分からなかった。

「……本当に?」
「本当だよ、王子」

驚いた顔の王子に、サングレが呆れ顔で言った。

「そいつは男だ。残念だったな」
「えぇ!? マジで言ってんの!?」

黒いパーカーの青年も、素っ頓狂な声を上げる。

「超びっくり! だってどこからどう見ても女の子じゃん! ねぇ王子?」
「……本気で言ってるの?」

そう呟いた王子の声は、今までよりも一際低い。

「あ、あの……何だか、ごめんなさい」
「……」

しばしの沈黙の後、はぁー、と深い吐息をつき、王子は小さな舌打ちを漏らした。

「何だよ……面白くねぇの」
「ちょ、王子!! 裏の顔が出てるから!! 小さな男の子の前でそれは駄目だって!!」

男の子、という単語に、王子は露骨に怪訝そうな表情を浮かべた。

人通り ―People―→←城下町 ―Town―



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設定タグ:不思議の国のアリス , 童話 , おとぎ話   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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作者名:くろーさぎ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年7月29日 16時

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