城下町 ―Town― ページ8
サングレとアリスは森を抜け、賑やかなワンダー王国の城下町へと向かった。
「……こんな所には来たくなかったんだがな」
コートのフードを被って顔を隠し、サングレは苛立ったように呟く。
「ご、ごめんなさい……あの、サングレさんってこの国の住民、なんですよね……？」
「……生まれはこの国だが、育ちはあの森だ。俺にこの国は合わねぇよ」
どうやらサングレは少々世間ズレした人物のようだ。悪い人じゃなさそうだけどな、と思いながら歩いていると、前方からキャーキャーという歓声が響いて来た。
「な、何ですか……？」
「……うるせぇな」
その言葉はアリスにではなく、前方の人だかりに向けられたもののようだった。
「王子様、今日もカッコいいです……！！」
「本当、近くにいられるだけで幸せ！！」
たくさんの女子に取り囲まれて、「どうもありがとう」と微笑んでいるのは、優しそうな好青年。
「王子様ぁ！ 本日も大変お美しいですわ！！」「そっか、ありがと。君も綺麗だよ」
「これ、王子様のために作りました！ 受け取って下さい！！」
「へぇ、凄いね！ 嬉しいよ、ありがとう」
にこやかな笑みで男が返すたび、周囲の女子から黄色い声が上がる。アリスが隣を見ると、サングレは相当苛々しているらしい。
「あの野郎、いつも話しかけにくい状況じゃねぇか……」
「……あっ、君！」
王子様、と呼ばれていたその人物は、サングレの姿を見つけ、自分を取り囲む輪から抜ける。
「ごめんね。ちょっと僕、用が出来たみたいだ」「えぇっ！？ もうお別れですかー！？」
「いつまでも待ちます！！ またお食事に誘わせて下さい！！」
うん、またね、と笑顔で女子達を見送った後、彼は振り返った。
「いやぁ、ごめんごめん。話しかけづらい雰囲気だったよね」
「ったく……人前じゃ俺からは話しかけられねぇの、知ってるだろ。嫌われてんだからよ」
「そんな事ないと思うけどね。話しかけてくれたら、僕は嬉しいよ」
会話するサングレと彼は、親しい仲だというのが分かった。そして、サングレは嫌われ者らしいという事も。
「にしてもサングレくん、久しぶりだね。しばらく会ってなかったよね？」
「ああ、まぁな。つーか、この国に来てんなら、連絡くらい寄越せよな」
「ごめんごめん。女の子達の相手が忙しくって。でも、僕が来てるってよく分かったね？」
その辺は勘だ、と返すサングレの隣に、美少女がいるのに彼は気づいた。
「あれ？ その子は……」
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