９つ ページ9
思わずビクッ、と肩が震える。
「おれたちは山賊だ」
俺はこの場面を知っている。知らないはずがない。知っているからこそ、少し身構えてしまう。
それでも名場面だ。これは肉眼に焼きつけておかないと……と山賊の方に目を向けようとして、視界が黒くなった。ベンの手だ。頭を撫でるふりをして、大きな手で視界が覆われたのだ。
それがビビってる俺への気遣いであることは確かだった。
い、イケメン〜〜でも見えねえよお〜〜
酒を出せという山賊に、マキノさんがお酒を切らしてしまったことを伝えているのが聞こえる。そして、
「これでよかったらやるよ
まだ栓もあけてない」
バリィィン！！
瓶が割れる音がした。今か今かと待っていたそれに、またビクリと反応してしまう。一連の流れを聞きながら、俺はいかにシャンクスがかっこいいか痛感していた。
一般人の器の広さじゃない。
ここ数日でシャンクスと話す機会は何度かあったが、まぁ優しくて陽気なおじちゃんって感じだった。本人はまだお兄さんだと言い張るが。
それから山賊はカウンターを荒らし、
「じゃあな、腰抜けども」
と言葉を残し店を出て行った。
私はそれを確認してから、ベンの膝の上からするりと降りて裏に箒とちりとりをとりに行く。背中のほうではどっと笑いが起こっていた。
「おうA、すまんな、ありがとう」
「シャンクス怪我は？」
「大丈夫だ、ありがとう」
シャンクスは麦わら帽子をかぶり直し、もう片方の手で破片を片しにきた私の頭を撫でた。
「なんで笑ってんだよ！！」
こりゃひどい。大きな破片から小さな破片まで目を凝らして集めながら、怒るルフィを横目で見る。「おい待てよルフィ」そうして一通り不満をぶちまけて背中をつけたルフィの腕をシャンクスが掴んだ。
びよーーん
宴を再開していたクルーの全員が酒を吹き出した。そして初めてそれを目の前にした俺は、ちょっとの恐怖と感動に「うわっ」と声が出た。
「なんだこれあ〜〜？！」
「ないっ！敵船から奪ったゴムゴムの実がっ！」
ルフィの腕が、文字通りびよーんと伸びたのだった。CGじゃない、ガチのやつだ。
「ゴムゴムの実はな！食えば全身ゴム人間！そして一生泳げない身体になっちまうんだ！！」
「えーーっ！うそーーー？！」
店中にシャンクスとルフィの声が響く。
こうして俺は無事名場面に立ち会えたのだった。満足。
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Ciel - 面白いです！便新待ってます。頑張ってください！ (2021年9月2日 0時) (
レス) id: b6f6449f96 (このIDを非表示/違反報告)
アニメ大好きwoman - とっっても面白いので早く続きが読みたいです！更新頑張って下さい！ (2020年3月8日 2時) (レス) id: 8b1d0909e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：北乃 | 作成日時：2020年2月1日 11時
