10 ページ13
__
夢主side
「…」
私が窓の月明かりを呆然と見つめていたとき。
不意に名前を呼ばれた。
その声は私を現実に引きずり戻す。
「来ないで!お願い、見ないで…っ!」
それが田噛だとわかっていた。
なのに分かっていて振り向いた。
そして咄嗟に顔を背け、咄嗟にも言葉を紡いだ。
田「…」
田噛は何も言わない。
それが怖くて、いやで、自然と涙が溢れる。
「お願い、田噛…見ないで…」
自分でも情けなくなるような震え声。
それでもこの目を見られるよりましだった。
なのに、田噛は近付いてくる。
「田噛!やだっ来ないで!来るな!!」
言葉が乱暴になる。
私は手で顔を覆って下を向いた。
見られたくない、見て欲しくない__。
田「…」
瞬間、暖かい温もりが私を包んだ。
「…えっ」
何が起こったのか分からず私は目を大きく見開いた。
そして、やっと分かる。
田噛に抱き締められているんだと。
それもキツく、強く、まるで離さないと言うかのように。
田「…その目、俺は何とも思ってねぇ」
そう呟かれる言葉。
ただの慰めの言葉、そんなのわかっているのに。
「…う、嘘」
思わずそう言った。
だって信じられないから。
この目を何とも思っていないなんて。
田「嘘じゃねぇ…だるいからさっさと仕事終わらせて帰るぞ」
その、言葉が嬉しくて、
その、温もりに安堵して、私は泣いた。
田噛にしがみついて、無様に泣いた。
「田噛、ありがとう…」
何度も言った。
この感謝を伝えたくて。
「…ありが、とう……!」
謳うように、言った。
そうでもしないと私の気が収まらないから。
田噛はもっとキツく抱き締めてくれた。
25人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆっきい - 田噛がイケメソすぎて涙出てきたお、、、、、 (2016年9月17日 9時) (レス) id: 0db5e774af (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:燐音 | 作成日時:2015年7月4日 16時