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アリスは、彼らの名前が決まったら、まとめる役としているのだが、今のところ、チェシャの苗字だけである。
「あ、兄妹なのだから、私の苗字も千榎田ね」
ロザリアが声を上げる。確かにその通りだ。
「あ、そうか。陛下とオレ、兄妹か……」
「千榎田って響き、私は好きよ」
「なら、チェシャとロザリアさんは千榎田ね」
「ローズでいいわ。今の私は女王でもなんでもないもの。チェシャ、貴方もよ。いつまでも陛下なんて呼ばないで」
「じゃあ、えっとローズとチェシャは、あとは名前ね」
「……ロ、ローズ、様」
ロザリア本人からそう言われた事もあり、アリスはあっさりと呼び捨てにしたのだが、チェシャはそうも行かなかった。
長年、仕えるべき相手としていたのだ。愛称ですら、呼びにくそうに呼び、陛下と呼ぶなと言われた為か、今度は様を付けていた。
これには、アリスもロザリアも顔を見合わせ、ため息をついた。先は、長そうだと。
そうして、あの後、暫く考えて名前に使いたい漢字を思いついたチェシャ。しかし、今の自分が、騎士の騎という字を名前に使うなど、いいものか。
(オレは…結局、騎士でも何でもねーんだよな)
思い悩むようにぱらぱらと漢字辞典をめくるチェシャを、ローズは何かを考えながら見つめていた。
「親子の名付け…共通する字を…いや、画数が…」
一方、まだ少しも決められずにいるのがハッターだ。あれでもないこれでもないと、既にテーブルの上はぐちゃぐちゃのメモ用紙だらけになっている。
「ハッター、決まりそう?」
「いや…難しいな。チビ達の分も考えると、どうにも」
「ま、オマエはそーだよな」
チェシャはああ、と察した顔で苦笑した。
マーチとスーリ。その二人との繋がりを持たせたくて、迷走しているのが分かりやすい。
「苗字でも名前でもいーけど、呼び間違えても誤魔化しのきく名前にしとけよ? オレもそーだけど」
「ああ…それも考えないといけないんだったな。どうするか…」
これは長くなるな。アリスとローズは思わず目を合わせて苦笑した。
結局この日、夜になってもハッターの名前は一文字たりとも決まることはなかった。
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作者名:ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年7月22日 15時