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「アリス！」
屋上。
「ハッ…波多くん。千榎田くんのとこ行ってたの？」
「ちょっとな。はい、弁当」
「ありがとう」
2人で並んで弁当を食べ始める。リカの手料理や箸での食事に慣れなかったハッターも、今ではすっかり自然なものだ。
「チェシャ、大丈夫だった？」
「俺の前ではな。多分、あいつアリスの前の方が泣くぜ」
「そうなの？」
「変に幼馴染だとな。俺もあいつの前でだけは泣きたくねえし」
「ふふ、男の子の友情だねえ」
「なんだそれ」
クスクス笑いながら弁当をあらかた食べ終え、バンダナに包み直したあたりで「あのさ」と真剣な声がアリスを呼んだ。
「聞きたいことがあるんだが」
「うん…なあに？」
「えっと…じゃなくて、なあ。回りくどいのはもう終わりだ。お前、俺のこと好きだろ」
「……え？」
アリスはじわじわと自分の頬が赤くなっていくのを感じる。やばい、ほっぺた熱い、何言われた？
「な……何で」
「見てりゃわかる」
アリスは口をはくはくとさせるけれど、うまく言葉にならなかった。
「…ってのは半分ウソで、さっきチェシャのやつと話してんの聞いてた。盗み聞きして悪ィけど、お前は考えすぎ」
「なっ…聞いてたって、どこからどこまで！？」
「だから全部。お前が俺を好きなのも、いつか会えなくなるからって悩んでることも知ってる」
「んなっ……」
「お前がいつか会えなくなるって言うなら、俺は絶対また会う方法を見つけてやる。現にこうやって別の世界に渡ることは出来てんだ、可能性がないわけじゃないだろ。だから……ああ、そうじゃなくて」
不意にグイッと引き寄せられてハッターの胸元に収まってしまう。いつかお菓子を振る舞ってくれたハッターは、相変わらずバニラの甘い香りが染み付いてる。
アリスはその温もりに包まれながら、次の言葉が耳に入ってくるのを聞いた。
「俺もお前が好きだ。一緒にいてくれよ」
「……うん」
真っ白になった頭でようよう頷き返すと、ぎゅっと抱き寄せた腕に力が込められた。
ーーいつか離れ離れになったとしても、多分、この温もりは忘れられない。
アリスは小さく笑って、ハッターの背に手を回した。
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作者名：ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月22日 15時
