1-4(日向なつ) ページ4
「ハッターさん、だったわね」
アリスがパタパタと駆けていったのを見送ると、リカはハッターに向き直った。
「改めてお礼を言うわ。あの子がお世話になったみたいだから」
「…いえ、大したことは。むしろ、おれ…ゴホン、私たちの事情に巻き込んでしまって、申し訳ない限りです」
「いいよ、楽に話して？ あたしはもう貴方たちにこの家に住んでもらうつもりでいるんだから」
「…すまない、助かる」
「あ。やっぱりちょっと無理してたんだね」
「バレてんの」
「うるせえ猫」
リカに微笑まれ、ああこの人がアリスの姉なのだなと感じる。アリスとは似つかないショートカットの髪に、アリスよりは小柄な体躯。それでもどこか心を許してしまうような、暖かい笑みはアリスとの血縁を感じさせた。
「うちは両親も早くに亡くしててね、二世帯住宅…隣にもう一つ家がくっついてるような作りだから、部屋はたくさんあるの。服はそうね…ローズちゃんとスリーピーちゃんにはアリスのお古なら着られると思うわ。ハッターくんとチェシャくんは…うーん、お父さんのじゃ大きいよね…横幅とか」
「俺たちの服はアトリエから持ってきたから、しばらくは困らないと思う。この世界でも宝石の価値が変わらないなら、ローズとチェシャは手持ちのアクセサリーを換金しないとな」
「あ、さっきテレビってやつで言ってたぜ。金の価値がどうとか」
「金細工のアクセサリーならいくつかあったはずよ。ハッター、貴方たちにも分けておくわ」
ハッターとリカを中心とした話し合いは続き、リカはローズの取り出した宝飾品に目を見張ることになった。日用品の買い出しにはリカの休日である明後日をまるまる当てることになり、話し合いはこれからの生活についてとなった。
「できるなら全員だけど、マーチくんとスリーピーちゃん…それからローズちゃんね。この３人は義務教育の年齢だし、学校に行けるといいんだけど」
「ああ…小学校と中学校、だったか」
「戸籍とか身分証もどうにかしないといけないし…難しいかしら」
「何の話？」
掃除を終えたアリスは話を聞くと少し悩んだあと、クッキーの入っていた箱を取り出した。
「アリス？」
「さっき、箱の裏になにか書いてあったの。ほら…『
アリスが何気なく文字に触れる。と、箱の内側が光を放った。
「何！？」
「箱に…何か、入っているみたいね」
箱を開くと、そこにあったのはハッター達を模したアイシングクッキーだった。
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作者名：ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月22日 15時
