3-7(ユエル) ページ28
「告白を断るなら穏便に、アリスに誤解が向くような言い方はよせ」
｢これから気をつける｣
そんな話をした、翌日の事だった。登校してきてすぐ、生徒達の間では、口うるさいとの事で有名な生徒指導の宮田という名の先生にチェシャは声を掛けられた。
「おい千榎田、ネクタイをきちんと閉めなさい」
「オレ、首が苦しいのは、苦手、で…」
「苦手だからどうした。規則だ。閉めなさい。これは、お前だけに言っているんじゃないぞ」
宮田の言葉に躊躇うものの、ここは素直に従わなければ解放されなさそうである。チラホラと周りに居る生徒達も、何事かとこちらを控え目ながらも見ているようで、視線が刺さる。早く教室に入る為にも、チェシャはネクタイを閉めた。首が圧迫される感覚に、いつかの日がフラッシュバックする。
しかし、それを顔には出さずに、ネクタイを閉めたこと宮田に見せれば、彼は納得したようでその場を去っていった。それを確認してから、ネクタイをそっと緩めた。今度は若干圧迫感が感じる程度にしたので、パッと見は分からないはずだ。面倒、だなんて思いながら、教室に入ろうとすると、声を掛けられた。
「千榎田くん、ちょっといい？」
「ん？」
「ちょっと、そこの廊下で話そうぜ」
「いーけど…」
チェシャは、相手がやけにニヤニヤしていた事に気付いたものの、そこまでだった。どうやら、彼の危機察知能力は、自身に対しては一切と言っても過言では無いほど、機能しないようだった。
「で？話って？」
「腹立つんだよお前、中野フッた癖に白羽とはベタベタしやがって！」
「は…？」
「ちょっと顔が良くて、女子から告られるからって、調子乗ってんじゃねぇよ！」
「？」
チェシャにいちゃもんをつけた男子生徒は、急にチェシャの胸ぐらを掴んだ。しかし、チェシャは頭にハテナを浮かべているだけだ。
「スカしてんじゃねぇよ！」
「ん？」
「ってめぇ、舐めんのもいい加減にしろよ！！あぁ、そうだ。お前さっき宮田に言われてたもんな？ネクタイはちゃんと閉めろって」
チェシャの態度が気に入らなかった男子生徒は、胸ぐらを掴んで居たのをネクタイを掴むことに変え、そのままキュッとネクタイを閉めた。それは一瞬の事であり、何かされても殴られるくらいか、なんて呑気なことを考えていた事も重なり、反応できなかった。ネクタイを閉められ、急にくる首の圧迫感に、チェシャは急に目の前が真っ暗になった気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月22日 15時
