3-5(日向なつ) ページ26
「ねえ、白羽さん」
「ん?」
「これ、千榎田くんに渡してほしいの」
「私も! 私はこれ、波多くんに」
「あ、あー、ええっと…」
まずいことになったなあ。
もう何通目かのハートマークが飾られた手紙を前に、アリスは苦笑いをこぼした。
見目もよく、元の年齢は自分たち高校生より上というだけあって周りの同級生より大人っぽい。
そんな2人の高嶺の花が、こちらもまた転入生で少しクラスから浮いているアリスに、まるで騎士か配下と女王のように甲斐甲斐しく付き従っているとなればーーまあ実際、それに近しい関係ではあるもののーー恋に恋する女子高生たちからの目線は、まあ鋭いものになるというわけで。
「ええっと…その、ごめんね? ハッタ…波多くんたち、多分返事はくれないと思うんだけど…」
「え、何? そんなこと言って、白羽さんが波多くんたちを独占したいだけじゃないの?」
「この前ミーコが千榎田くんに告白したら、大事な人がいるからって言われたらしいけど…白羽さん、何か知ってる?」
「え、えっと…」
助けてお姉ちゃん、ハッター、チェシャ!
ダメだ、今少なくともチェシャはあてにならないや。
アリスは教室でにこにこと
「…わかった、一応渡すだけ渡してみる。でも、2人がどう答えるかは知らないからね」
「大丈夫だって、白羽さんに心配されなくてもうまくいって見せるから!」
「う、うん…」
アリスは手渡された何通かの封筒を渋々受け取る。
可愛らしい文字で書かれた2人の名前が、やたらとずっしり重く感じた。
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年7月22日 15時