【kgm】社長がダチとかラノベかな？

EP.4_1 ページ15

「そういえば、下の名前で呼ばないんですか？」

「……考えたこと、なかったわ」


　つい先日社長と友達であることがバレてしまった中村ちゃんに誘われて、バーに来ていた。折角だから社長とのお話聞かせてくださいよ、なんて言われて。やんちゃしていた大学時代のことを話すと怒られそうなのでその辺りは若干ぼかしつつ、適当にペラペラと話していたのだが。突然中村ちゃんからそんなことを言われた。


「私は会った時と呼び方変えたけど、向こうはずっと丹さんって呼んでる気がする。でも特にそれに違和感とか不満とかなかったから……」

「へ〜、でも結構仲良いんですよね？」

「私的にはめっちゃ仲良い」

「だったら下の名前呼びにした方がより相手に親愛が伝わるんじゃないですか？」

「あぁ〜まあ、確かにそれはそうかもね。下の名前呼びか〜……今更変えんのもなんか違和感あるけど、今度やってみようかな」

「やったら結果教えてくださいね！」

「ふーい」


　下の名前呼び。個人的に「さん」や「くん」を外すよりハードルが高いな、今まで散々名字で呼んできたから尚更だ。仲の良い人に対して親愛の意を込めて下の名前で呼び捨てにするのは自然なことではあるんだけども。ただあいつがどんな反応をするかは気になるな、驚くか受け流すか、ワンチャン照れるか？ それはつまり加賀美ハヤト(顔面偏差値二億兆点満点)の赤面が見れる可能性があるってことでよろしいか？ なにそれ絶対やる。あいつは結構感情豊かで照れることも多々あるが、人が顔を赤くして焦っている様は何度見ても面白い。加賀美ハヤトの場合、そこに愛おしさが加算される。素晴らしい。


　——そんなわけで。いざ、実行。


「あぁ、そういえば前に言ったブランチ食べに行くって話どうします？」

「あー、私は別になんでも。この前アキバ行ったばっかだし来月あたり行く？」

「そうですね、そうしましょう」

「どうする？ ハヤトはなんか行きたい所あったりする？」

「えっ？」


　普通に喋ったからスルーされるかな、と思ったけどしっかり反応してくれた。僅かに顔を赤くして、困惑混じりに「ええと、」なんて声を漏らす。え、待ってそこまでガチな反応されると思ってなかったよ私。何その乙女みたいな反応、名前呼ばれただけで照れるな愛おしい通り越してこっちまで段々恥ずかしくなってくるから。


「逆にA……は、どっか、行きたいとこある……んですか？」

「タメか敬語かはっきりしろ」

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