EP.9_1 ページ29
「これ引かれるかもしれないんだけどさぁ」
「ん?」
私さ、都合のいい友達が欲しいんだよね。どこを見つめるでもなく、グラスを煽った彼女はそう言った。バイト終わり、駅で落ち合った俺たちはバーに来てひたすら酒を飲んでいた。俺たちは結構バカな飲み方をすることが多く、それ故にとんでもない行動をすることもしばしば。朝起きたら丹さんの家のベッドで添い寝してたとか、その他諸々エトセトラ。最初のうちはまた何かやらかさないかとヒヤヒヤしていたが、一周回ってここまできたらもう恐れるものはないだろうと、再びアホな飲み方を解禁したのがつい先日のこと。そんなある日。
……「都合のいい友達」、か。なるほど確かにそこだけ聞くと、他人を利用する薄情で性格の悪い奴に聞こえてしまう。だが俺はこいつがどんな人間なのか知っているので特に何も思わない。こいつなりに何か考えるところがあるんだろう。
「都合のいい友達ね……どんな感じ?」
「先に言っとくけどめっちゃ高望みだよ。聞くかい」
「聞くかい、じゃなくて聞いてよ、の間違いだろ」
「それはそう。えっとねぇ」
優しくて、構って欲しい時に構ってくれて、めちゃくちゃ過度なスキンシップしても許してくれる人。一つ、一つと指折り伝えられたその条件。それはどっからどう聞いたって、恋人の条件そのもの。それ恋人だろと言えば、違うと返される。一体何が違うんだ、そこまでいったらもう友達も恋人も変わんねえだろ。いやでもこいつのことだから何かあるんだろうな、と次の言葉を待つ。……何もこない。聞いて欲しいんじゃなかったのかよ‼︎ と必死に適当な言葉を模索して、我ながら重っ苦しく口を開いた。
「あー……なに。それはさ、俺はダメなわけ?」
「いや全然ダメじゃないよ? でも都合のいい友達になってくださいなんてとても言えないよね」
「別にいいけど、都合よくて。俺もお前のこと都合よく扱ってるし」
「いやぁ〜、私の言う『都合のいい友達』は特殊すぎて……お前みたいな根が真面目なやつには多分無理だと思う」
「んだそれ」
後から考えると、ここで「俺はダメなわけ」という発言が出てきた時点で無意識の内に彼女に惚れ込んでいたのかもしれない。けれど彼女はそれに何か突っ込むこともなく話は進んでいき、お前顔はいいんだからいっそ適当に男引っ掛ければ、と言おうとした次の瞬間。
「うおっ⁉︎」
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如月1123(プロフ) - ヨツハさん» コメントありがとうございます、見つけて頂けて光栄です!私的にギャグ七割、恋愛三割ぐらいの感じで進行していければなと思っているので、笑って頂けて何よりです!お心遣いと応援感謝します、これからもよろしくお願い致します!! (2022年9月25日 13時) (レス) id: 857dce4f12 (このIDを非表示/違反報告)
ヨツハ - 初コメ失礼します。社長大好きなので見つけられて良かったです❗夢主の発言が毎回面白くてめっちゃ笑ってますw体調に気を付けて、これからも頑張って下さい。応援してます❗ (2022年9月25日 13時) (レス) @page14 id: 9b4b72f413 (このIDを非表示/違反報告)
如月1123(プロフ) - 飴さん» コメントありがとうございます!楽しく読んで頂けたなら作者冥利に尽きます…お褒めの言葉とても嬉しいです!!応援ありがとうございます、これからもどうぞよろしくお願い致します!!! (2022年9月25日 10時) (レス) id: 6bb8b6637d (このIDを非表示/違反報告)
如月1123(プロフ) - Hazukiさん» コメントありがとうございます、私が神です!!大嘘ですごめんなさい!!!確認したら画質ゴミカスだったのによく文字も絵も見えましたね……お褒めの言葉、とっても嬉しいです!これからも頑張らせて頂きます、よろしくお願い致します!! (2022年9月25日 10時) (レス) id: 6bb8b6637d (このIDを非表示/違反報告)
飴 - 初コメ失礼します!いつも楽しく拝見させてもらってます、お話めちゃくちゃ面白いし読みやすいしイラストもお上手で…!これからも更新楽しみにしております、応援してます! (2022年9月25日 1時) (レス) @page42 id: f3ac384fdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:如月1123 | 作成日時:2022年8月27日 17時