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中学3年の春、彼は少し変わった。それはごく僅かな変化で、身近にいた私でもスルーしてしまうくらいの変化だった。テスト期間だろうとお構いなくいつでもテンションが高かった彼が、何でもない平日の放課後の教室で数十分無言で突っ伏していたこともあった。




より具体的に言えば口数が減った。ほんの僅か。まあ生きていればそういう日もあるだろう、受験生というプレッシャーかもしれない、と推測していた私は特にその事に触れようとしなかった。




それから数ヶ月して夏になる頃にはまたいつもの彼に戻っていた。何があったのかは知らないが吹っ切れたなら良かったと安堵の念を抱いたのを今でも覚えている。




毎年恒例のこの地区の夏祭りは昔から彼と行くことになっていた。今年は受験生ということで、私も彼も夏休み中はずっと塾に通っていた。だからこそ、唯一与えられた休息の日を2人とも心から待ち望んでいた。少なくとも私はそう信じていた。




でも彼は待ち合わせ場所に来なかった。家は隣だというのに、わくわく感がないからと言ってわざわざ駅前で待ち合わせた。浴衣も着た。それもこれも全て彼のためで。彼に裏切られたショックは大きく、それはさらに受験のストレスと相まって、私の心を深く抉った。その後かなり時間が経って彼からLINEが来た。私は全て無視し続けた。




夏休みが明けた登校初日に朝早くから家の前で待機していたらしい彼が "ほんまにごめん" と珍しくおちゃらけた様子もなく深々と頭を下げるまで私たちに会話はなかった。




秋の模試では私も彼もなかなかの成績を残して、このまま行けば合格は余裕だと言われるくらいにはなっていた。全てが順調に思えていた。




そして冬。彼の口数は春よりも減った。明らかに減った。さすがにおかしいと判断して、何かあったのかと尋ねてみたものの




「なんもないけど、Aこそどうしたん?(笑)」




なんていつもみたいに笑って返してくるものだから私は春と同じように深く追求はしなかった。この時に、いやもっと前から無理矢理にでも彼に事情を問い質せば良かったと今でも思う。







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A子(プロフ) - 凜憧さん» コメントありがとうございます。お褒め頂くほどの文才はございませんが、非常に嬉しいです。励みになります。更新頑張らせて頂きますね! (2019年8月30日 22時) (レス) id: 3b9a42010e (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 惹きつけられるような魅力的な文章で、とても読みやすく面白いと思いました。大変かと思いますが、更新頑張ってください。続きを楽しみにしています。 (2019年8月30日 13時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:A子 | 作成日時:2019年8月29日 2時

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