12 ページ12
.
水面に映った自分の顔があまりにも酷く歪んだのを見て正気に戻る。過去の記憶が走馬灯のように蘇ってきた。それは何分、何時間にも感じたが上手く働かない頭で腕時計を見てもさほど時間は経っていない。
先程まで傘を使って遊んでいた中学生たちがこちらを見てぎょっとした顔をしている。そこまで私の今の表情は酷いのだろうか。そう思った次の瞬間、腹部から下が一気に冷える。
「つ、めた、ッ！」
どうやら大型トラックが私の横を通り、見事にその前輪が勢いよく水たまりを通過したようで。
「最悪...」
どうやら今日はとことんツイてないみたいだ。感傷に浸るのなんてやめてさっさと帰ろう。そう思ったところで見たかったドラマの再放送の時間を思い出した私は冷たい制服が風を切り余計に寒く感じるのを分かっていながら駆け出した。
「ただいま」
「あら今日はちゃんと言うのね」
「お母さんこそ "おかえり" は？」
「はいはいおかえ...ってあんたその制服どうしたの？」
こうなった経緯を伝えると、濡れた私を心配するよりも先に
「あんた明日学校に何着てくの〜」
なんて呆れられてしまった。怒るのならトラックの運転手を捕まえてきて怒って欲しい。
「...まあ、なんとかなるでしょ(笑)」
そう言った私の予想は嫌な方に当たっていたらしく、次の日風邪をひいた私は学校を休む羽目になった。
「あんたが風邪ひくなんて珍しいわね」
なんて昨日と同じ呆れた顔で母は言い放った。
水たまりとトラックの運転手を恨めしく思う反面、風邪をひいたのはどことなく気まずさを感じていた私のメンタルの弱さだと心の中で分かっている自分もいた気がした。
.
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←11
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 170人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
A子(プロフ) - 凜憧さん» コメントありがとうございます。お褒め頂くほどの文才はございませんが、非常に嬉しいです。励みになります。更新頑張らせて頂きますね！ (2019年8月30日 22時) (
レス) id: 3b9a42010e (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 惹きつけられるような魅力的な文章で、とても読みやすく面白いと思いました。大変かと思いますが、更新頑張ってください。続きを楽しみにしています。 (2019年8月30日 13時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：A子 | 作成日時：2019年8月29日 2時
