白烏 ２

【 本当の欲 】 ページ48

《 菅原side 》


菅「烏養さん」

烏「！…何だ？」

菅「…俺ら3年には “来年” が無いです」

烏「！………っ…」





けど、それは何処の高校でも同じだ。3年の奴らにとっては最後の試合。死ぬ気で価値をもぎ取りにくるだろう。でも、それは俺だって同じだ





菅「＿だから、１つでも多く勝ちたいです。次へ進む切符が欲しいです」





試合には出たい






菅「それを取ることが出来るのが俺より影山なら…」




正セッターとしての誇りもある。でもー…





菅「迷わず影山を選ぶべきだと思います」




自分個人の欲よりも、勝ちたい…沢山勝って全国へ行きたい気持ちの方が強い





菅「な…生意気言ってスミマセン…大地と旭とは一年の時から一緒にやってきました。一緒のコートに立ちたいです。1プレーでも多く」





悔しいけど、それが出来るのは俺より影山だと思う。俺が影山より優ってる部分があるとすれば、きっと経験と信頼

でも影山は時間の差すらも才能と努力で超えていくんだろう
悔しい。悔しくて悔しくて仕方がないのに…なんて頼もしいんだろう…そう思う





菅「影山が疲れた時、何かハプニングがあった時、穴埋めでも代役でも…“3年生なのに可哀想” って思われても、試合に出れるチャンスが増えるならなんでもいい。
正セッターじゃなくても出ることは絶対諦めない。そのためによりたくさんのチャンスが欲しい。他の三年にも俺の考えは伝えてあります」





これが俺の烏野(・・)のセッターとしての意地とプライド。
諦めない。烏野がより多く試合に出ること、そして試合の数の分だけ俺が出れるかもしれない確率を




烏「…菅原俺はお前を甘く見ていたみたいだ」



ん？




烏「正直 今お前にビビっている」

菅「はい！？」

烏「俺はまだ指導者として未熟だが、お前らが勝ち進む為に、俺が出来る事は全部やろう」

菅「！お願いします！」

烏「おう」





烏養さんの背中を見送りながら俺は上げた口角を下ろした
1人になった廊下は広く暗く感じた





貴「カッコいい、ですね…」

菅「うわぁっ！！？な、何だよ永田かー。脅かすなよもー…」



背後から気配無く声をかけられ心臓がドッコドコ唸ってる。あービビった。それと、聞かれたかー…




貴「俺…主に日向に、“秘密兵器” って…言われてます」

菅「ははっ、確かに言われてるな」

貴「菅原先輩も…秘密兵器…です、ね」




この言葉の意味はその時の俺には理解出来なかった

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