強気な女と強い鬼ー夜明けー

ー107ー猗窩座side ページ10

あれから久しぶりに俺はあのお方によって無限城に呼ばれた。



琵琶の音が響いてあのお方が現れる。



頭を垂れて蹲い平伏する。




無惨｢猗窩座、顔を上げろ｣



言われた通り顔を上げる。




無惨｢(最近コイツの言動が読めないが…特に変わりは
ないようだな…。鳴女の調子が悪いのか無限城
に呼ぶのにも時間がかかる…)｣




無惨様は何かを考えているのか少し黙った。




無惨｢最近あの女とはどうだ｣



無惨様の言う“あの女”とはAのことだ。



猗窩座｢変わりなく偵察を続けております。相変わらず
強いようです｣




俺がそう言うと無惨様は“そうか”と言った。




近況報告だけかと思ったが



何か嫌な予感がする。




無惨｢猗窩座、あの女に鬼になるように勧誘しろ｣



猗窩座｢！｣




どういうことだっ…！？



無惨様なら鬼にしたいやつは構わず鬼にするはずっ…！



何を…企んでいるんだっ…！？




ここまで考えて、無惨様に思考を読まれたらまずいことに気づく。



やってしまった、そう思った。




しかし何故か俺の思考は読み取られていないようだった。



何故だ…？



そう思ったが



更に耳を疑うようなことを言われた。




無惨｢そして女が“鬼にならない”と言った場合…｣



次の言葉を待つ。



無惨｢その女をお前の手によって殺せ｣



猗窩座｢っ！？！？なぜっ｣




思わず声に出てしまった。




無惨｢何だ、何か不満でもあるのか…？人間に情を湧か
しているわけではないだろう…？｣





無惨様のその瞳は俺を試しているようだった。




猗窩座｢っ…御意…｣




そう言うとまた元いた場所に飛ばされる。





そして俺はその瞬間、膝から崩れ落ちる。



Aを殺す？？俺が？



そんなこと出来るわけないだろうっ…！？




頭が大混乱を起こして思考回路が潰れそうになる。




鬼にならないなら殺す？




Aが鬼になるわけない。





というか俺は………




人間のAが好きなんだ。




杏寿郎と戦った時はいとも簡単に“鬼にならないなら殺す”と言えていたが




猗窩座｢なぜAなんだっ…！｣






その場にへたり混んで俺は頭を抱えた。




どうしたらいいのか



わからなくなった。

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