流れ星のようにキミは。 (ページ5)

今日:3 hit、昨日:24 hit、合計:22,647 hit

昼休みページ5

昼休みになって、俺はAに“着いてきてくれ”とだけ伝えて体育館倉庫の裏に行って

今、向かい合っている。

Aの顔色からはまだ何も分からないが

聞くしかない。

深く息を吸って目の前のAを見つめる。

あの時と変わらない瞳が俺だけを捉える。

猗窩座｢俺のこと…覚えてないか…？｣

一言そう言うとAは目を大きく見開く。

A｢えっ…と…ごめん。どこかで会ったこと…
ある…？｣

その言葉が俺の心に大きな爪痕を残した。

Aは前世の記憶が無いのだ。

つまり俺を知らない。

猗窩座｢っ、どうしても思い出せないか…!?俺は前世で
お前と…！｣

A｢いっ…｣

思わず掴んだAの腕。

猗窩座｢すまないっ…｣

バッと離して謝る。

ダメだ。前世の記憶があるからまだ時々力の加減がわからなくなる…。

今この話をしても…Aを困らせるだけだ。

猗窩座｢…すまない、もう忘れてくれ｣

もう辞めよう。

Aは前世の記憶が無くて、過去ではなく今を生きているんだ。

それだけだ。

自分にそう言い聞かせて引き返そうとすると

A｢待って！｣

ポケットに突っ込んだ腕を引っ張られる。

A｢お願い、待って…！その、上手く言えないん
だけど…！｣

Aの瞳が小さく揺れる。

A｢私に関係ある話なんだよね…!?その前世とか
どうとか…！｣

猗窩座｢！ああっ、そうだ…！｣

ドキンドキンと胸が波を打つ。

A｢じゃあ、私…もっと知りたい！キミのこと！
思い出したい、前世のこと…！｣

猗窩座｢Aっ…！｣

俺は思わずAを抱きしめてしまった。

A｢えっ、あっ、えっ｣

もちろんのことAは困惑している。

が…

ゆっくりとAの腕が俺の背中に回るのがわかった。

ああ、やっぱり変わらない

暖かさも、匂いも、抱きしめる腕も。

A｢と、とりあえず…名前、教えくれるか…？｣

時折、前世のような口調になるAは、やはりAなんだと思う。

猗窩座｢猗窩座、素山猗窩座だ｣

A｢猗窩座、わかった！よろしく！｣

Aの笑顔を今度こそ守り抜こう

例え記憶が戻らなくとも。