19 ページ20
伊沢side
伊沢「…どうですかね」
須貝さんがドアに耳を当てて中の状況を
探ろうとしていたが、反応がない。
須貝「んー、なんとも言い難いな」
福良「どーゆーこと？」
須貝「会話は途切れたけど…」
伊沢「途切れたなら大丈夫なんじゃ…？」
須貝「俺が入ってみるから、2人はここにいて」
福良「いいの？」
須貝「なぁに、こんなんが俺の立場だろ？」
伊沢「…ありがとうございます」
福良「迷惑かけるね」
須貝「じゃ、１分で俺がここに戻ってこなかっ
たら2人ともおいで」
福良「分かった」
そう言って、須貝さんがドアを開けて
おれらのオフィスに入っていく。
福良「後で須貝さんに感謝しなきゃね」
伊沢「うん…」
俺の中では小さな突っかかりがあった。
須貝さんが、一人でいる理由。
動画のメンバーは7人だし、
人数の都合って言ったら聞こえはいい。
でも…須貝さんはいい人だから、
俺らに依存しなくても、
きっといい人生を送れる。
…と、俺は思う。
福良「もしかして、僕と同じこと考えてる？」
伊沢「けんも、考えてたの？」
福良「須貝さんがここにいてくれる理由」
伊沢「あっ…うん、同じこと考えてた」
福良「…聞くに聞けないよ」
伊沢「…うん」
福良「機会があったら聞きたいね」
きっと答えが聞けるのは、
俺らが別れる時。
それぞれの人生を決めて、旅立つ時。
今からしたら想像もつかないが
きっと、そんな時が来てしまう。
伊沢「そんな時来るのかな」
"今のままがいい"
と心で願った俺に
福良「きっと来るよ、嫌でもね」
"終わりは来るんだよ"
と笑顔で俺に答える彼。
伊沢「だよね」
福良「伊沢様が社長で会社でも作ったら？」
伊沢「そんなの無理でしょ」
と、軽く笑って逸らした。
でも、俺は研究者としてやっていけるのか、
不安で、しかも分からない。
今まではクイズを糧にして、自分の夢を疎かに
してきた悪気が今になって込み上げる。
"俺の夢は、本当に夢なのか"
不安定な今だからこそ、疑問が頭を過ぎる。
"その夢は本当に今やりたいことなのか"
自問自答しても、はっきりと答えられない。
俺は…研究とか、そっちじゃなくて、
"クイズ"をしていたい。
でも、東大に入った理由と変わってしまう。
それはおかしい。
福良「冗談だと思った？」
伊沢「え」
福良「拓司のやりたいことをやればいいの！」
伊沢「…うん」
福良「ま、今は楽しもうよ、ね？」
伊沢「そうだな、ありがと」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅思匡 | 作成日時：2019年3月30日 8時
