16 ページ17
川上side
須貝さんが数分前に『席外すね』
と言って出ていった。
荷物はあるから帰ってくるだろうけど
…拓哉さんが少しイライラしてるから
きっと告げ口されたんだろな。
川上「拓也さん」
河村「なんだい？」
川上「…ごめんなさい」
河村「なんの事かな？」
川上「え？聞いてないんですか？」
まさかの反応をとられて、気が動転する。
マヌケた声で返答してしまい、
彼がクスッと笑うのが見えた。
河村「僕が嫌なら離れればいい」
川上「…え？」
河村「僕は君に首輪も手錠も付けないから
逃げたいなら逃げればいいんだよ」
悲しげな顔で俺の方を向く。
川上「あの…その…」
この方に捨てられたくない。
こんなはずじゃなかった。
河村「だから何？はっきり言えないの？」
急かされるように言葉を付け足され、
俺の心が幼過ぎたことを知らされる。
川上「えっと…その…」
恐怖のあまり、言葉が出てこない。
ここまできてしまうと、
何を言っても捨てられる気がする。
おもむろに遠くの方で彼が立ち上がり、
ゆっくりと、僕の目の前に立った。
ソファに座っている俺から見たら、
大きなプレッシャーだった。
その壁が怖くて、つい、下を向いてしまう。
嗚呼、
耐えていた涙が今にも零れてしまいそうだ。
嘘なんて、つかなきゃ良かった。
________________________
河村side
冷たい態度をとるのは慣れている。
よく、嫌いな奴にやっていたからね。
これくらいで反省するかと思ったけど、
どうも怖くなってしまったらしい。
そこで、俺から仕掛けてみることにした。
下を向いた彼の顎に手を添えて、
クイッと持ち上げる。こちらを向くように。
目を見てみると、赤く充血してて、
恐怖の余り泣いてしまいそうなんだろう。
河村「謝った理由、言える？」
今までの少し低くしていた声を普段通りに
戻し彼が返答しやすいように笑った。
川上「俺…かまって欲しくて…焼いて欲しくて」
河村「それで？」
川上「もっと…愛して欲しかった」
河村「…そう、言ってくれればよかったのに」
川上「ごめんなさい…反省してます」
あ、いいこと思いついた。
反省することなら…『罪』って事を
自白したんだよね。
じゃあ…『罰する』のも、正当化できる。
河村「ねぇ、悪いことしたんだからさ」
川上「…はぃ」
河村「『罰』がいるよね？」
そう言って、俺は彼の視界を奪った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅思匡 | 作成日時：2019年3月30日 8時
