第一話 ページ1
中学を卒業してすぐに父親の転勤で東京に引っ越してきた
都会での新しい生活にすら不安を覚えるが、入学する高校は男子校
真新しい制服に身を包んで校門を抜けた俺、直江Aはふぅと息をついた
満員電車に押し込められ、バスも危うく最寄りのバス停を通り過ぎるところだった
正直、入学式前にもうクタクタだった
家を出る前に姉は俺に「ロボットみたいだよ」と笑って送り出していたが、都会に荒波に飲まれるということを姉は知らないのだ
恐ろしいぞ、これは･･･と俺は一人呟いた
一息着いてから集合場所である体育館に向かおうと足を進めた
「･･･体育館ってどこ？」
東京の私立高校は俺の育った田舎の中学校に比べてとにかく敷地が広い
背の高い建物に囲まれ、右も左も分からない
まるで森のようだ
誰かに聞いてみるか、と人を探していると背後からドタドタという足音が聞こえた
「おっはよろしくぅ〜！！！！！」
「うわああああああ！？」
物凄い勢いで誰かが背中に飛びついてきた
驚いてみっともない叫び声をあげてしまう
「一年生だよな？って先輩なわけないか、挙動不審だし」
「び、びっくりした･･･。お、おはよう？」
心臓が飛び出るかと思った
振り向くと、茶髪の少年だった
「ごめんごめん」と頭を掻きながら笑っている
「悪い悪い、最初はインパクトかと思って」
「おかげで覚えられたよ･･･」
「で？新入生だよな？」
「そうだけど」
「良かった〜。体育館どこか知らない？この学校広くて分かんねぇんだよな」
どうやら俺と同じように迷子になっていたようだ
「俺も探してたところだよ」
「マジ？じゃあ、一緒に探そうぜ。俺、長谷将雅。お前は？」
「直江A。よろしく、長谷君」
「将雅でいいよ。友達第一号だな！」
同じく迷子になっていた将雅と友達になれたところで体育館を探す
入学式の開始時間よりも十分余裕を持って家を出たおかげで時間はたっぷりある
桜並木を抜けて図書館、校舎、食堂、プール等の施設を回りながら歩いた
広い敷地内を歩き回っていると、人が多く集まっている場所を見つけた
「お？あそこ何か人多くね？」
将雅が駆け足で向かったので後を付いていくと、どうやらそこが体育館だったようだ
入口で入学のしおりやらクラス分け表やらを受け取り、式の開始を待った
これからの学校生活の不安と期待を抱きながら
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作者名：青薔薇 | 作成日時：2018年9月16日 10時
