日本代表/三話 ページ4
『お前の使命は分かっているな』
端末の向こうから飛んでくる鋭い視線に背筋を伸ばす。
耳を塞ぎたくなるような不気味な音に耐えながら、私は薄く笑った。
「……勿論です。お任せ下さい」
右足のくるぶし付近に描かれたオリオンが鈍く光る。
「 ＿＿全ては刻印の意のままに」
***
代表発表会後。
選手達は宿泊施設である河口湖スポーツセンターへと向かうため集まっていた。
集合場所に着いた時には既に何人かがバスに乗り込んでいて、少し焦る。
彼はもう乗っているのだろうか。空いている席を探すフリをして、ある人物の姿を探す。
同じ学校の人と固まって座っている人ばかりだから、目当ての人物はすぐに見つかった。
笑みを浮かべ、明るい声で話しかける。
「一星で良いんだよね？ 隣、良いかな」
「え……？ ああ、はい！ 勿論です」
ロシアからの選手、一星充。
オリオンの使徒だ。
同じ刻印の選手として動く以上、どんな子か掴んでおかないと、後々面倒な事になってしまうだろうからね。
今のうちにある程度お喋りしておこう。
周りの様子を伺いつつ、他愛のない雑談を振る。
ロシアのサッカーってどんな感じなのー？ とか。
出来ればとっととこれからの動きについて話したいけれど、バレる訳にはいけないから。
適当に話題を振って暫く会話を続けていると、次第にバスの中は騒がしくなっていった。
着々と集まっているようだ。
「＿＿で、次の試合だけど」
バスが出発すると同時に小声で言う。
前の席の二人は窓の外を見て騒いでいて、こちらにほんの少しも注意を向けていない。
周りの人達も皆、私たちに注意を向ける人は一人もいない。
これからどうなるか知らない彼らは、随分とお気楽そうに見えて羨ましい。
そんな醜い気持ちに気づかないふりをして、指示を出す。
「豪炎寺から潰すよ。というか、強化委員から潰す」
分かりましたという小さな声を聞いてから、再び雑談を始める。
まるで何事も無かったかのように。
……我が事ながら、実に気持ち悪い奴だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虎倉瀬(プロフ) - この作品めちゃくちゃ好きです！！！！更新待ってます！！！！！ (2022年10月12日 0時) (
レス) id: 0804d1e466 (このIDを非表示/違反報告)
小雨(プロフ) - 霧野シュウさん» 面白いなんてありがとございます！とても嬉しいです。不定期更新ですが、完結させられるよう精一杯頑張りますね！ (2019年1月15日 21時) (レス) id: e8faf7cb28 (このIDを非表示/違反報告)
霧野シュウ(プロフ) - とても面白いです！更新頑張って下さい！！！ (2019年1月12日 11時) (レス) id: 3f23c4d3b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雨 | 作成日時：2019年1月1日 1時
