次の試合/三話 ページ25
真っ白なスクリーンに、若々しい緑の葉っぱが映される。
選手らが固唾を飲んで成り行きを見守る中、画面の中の葉が揺れて＿＿
『シャチョーサン！ここハワイじゃナイネ〜？』
浅黒い肌の水着を着た女性が、同じく水着を着た趙金雲を振り返ったところで、映像が途切れた。
どう見てもバカンス。
どう見ても遊び。
オーストラリア代表の試合と言っておきながら、ふざけているとしか思えない映像を流した趙金雲に、選手らから冷たい視線が送られる。
「おっと、これはナターシャとハワイアンセンターに行ったときの映像でした！」
「間違えてんじゃねぇ！！」
ヘラヘラと笑っている趙金雲に、剛陣がキレる。
当たり前だ。
みんな、勝つために必死なんだから。
しかし、呑気な趙金雲は更に大きな爆弾を投下する。
「実はですねぇ、オーストラリア代表の映像は手に入れられなかったんですよ」
じゃあなんでわざわざ集めたんだ。
こっちは歩くのもままならない体を、無理矢理動かして来たというのに。
一応、眉を下げて申し訳なさそうな表情をつくってはいるが、趙金雲からは全く謝罪の気持ちが見られない。
もともと好意的には見ていなかったが、より一層この男が嫌になった。
「それじゃあ、ミーティングは……？」
「無理ですねぇ〜。
ということで、本日は解散で〜す！」
険しい表情で問いかけた風丸に、間延びした腹立つ声で答える。
ええ！？ と不満の声をあげる選手らを知ってか知らずか、軽い足取りでミーティングルームを後にする趙金雲を見送って、それは長い溜息を吐いた。
相変わらず掴めない。
最終的には、何を考えているのか分からない趙金雲よりもよっぽど役に立つ、円堂の一声で"各自、己の課題克服をする"ということに決まった。
続々と選手らがミーティングルームを去っていく。
そんな中、私は一人で席に座ったまま動かずにいた。
いや、動けずにいた。
「(どうしよう……今日は相当調子悪いのかな)」
思うように動かせない身体と、他所に飛んで行ったまま帰ってこない心を持て余して。
正直今は、サッカーだとかオリオンだとか、考えていられるような状況じゃなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虎倉瀬(プロフ) - この作品めちゃくちゃ好きです！！！！更新待ってます！！！！！ (2022年10月12日 0時) (
レス) id: 0804d1e466 (このIDを非表示/違反報告)
小雨(プロフ) - 霧野シュウさん» 面白いなんてありがとございます！とても嬉しいです。不定期更新ですが、完結させられるよう精一杯頑張りますね！ (2019年1月15日 21時) (レス) id: e8faf7cb28 (このIDを非表示/違反報告)
霧野シュウ(プロフ) - とても面白いです！更新頑張って下さい！！！ (2019年1月12日 11時) (レス) id: 3f23c4d3b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雨 | 作成日時：2019年1月1日 1時
