愚劣な作戦/四話 ページ21
試合が再開する。
果敢に攻めこんでくる韓国だったが、その猛攻は日本の必殺タクティクス"エンジェルローブ"によって止められてしまう。
十人、つまり私も含めたゴールキーパー以外の日本選手で繰り広げた技は、簡単に韓国ボールを日本ボールへと変えた。
鬼道が奪ったボールは、明日人、そして灰崎へと繋がる。
そこに吉良が走ってきて再び小競り合いが始まった。
良くも悪くもブレない二人に呆れながら、私も周りに合わせて前線へと走る。
韓国選手など目にもくれずに俺が俺がと主張し合う二人は、ついにシュートまでも奪い合う。
灰崎の必殺シュートに、負けじと己の必殺シュートを重ねた吉良。
二つの異なるシュート技は不思議と融合し、新しい連携技を生み出した。
韓国のゴールネットが揺らされる。
同時に試合終了のホイッスルが鳴り響き、スタジアムは歓声に包まれる。
アジア予選第一試合は大激闘の末、日本の勝利で幕を閉じた。
……規格外すぎる二人に溜息しか出ない。
ミスった。
純粋にそう感じ、多少なりとも自身の指揮能力を反省する。
仕方がないとベンチへ戻ろうとして、足を踏み出そうとした瞬間。
身体から、ふっと力が抜けた。
浮遊感にも似た感覚に抗えず、ふらついた足は地面を捕えられない。
訪れるだろう痛みに目をキツく瞑った。
しかし、危惧していた痛みは訪れない。
痛覚まで馬鹿になってしまったのだろうか。
恐る恐る目を開けば、私を支える吹雪の姿があった。
「大丈夫？」
不安そうな灰色が私の顔を覗き込む。
次第に戻ってくる身体の感覚を確認して、私は誤魔化すように微笑んだ。
「……大丈夫。ちょっと躓いただけ」
「そう？ ならいいけど」
「大丈夫。心配してくれてありがとう」
そう言ってもう一度歩き出す。
今度はしっかりと歩くことができた。
「あ、Aさん！ タオルとドリンクどうぞ！」
「ありがとう、つくし」
受け取ったドリンクを一口飲む。
視界の端に映る、睨み合うペクと一星に知らないフリを決め込んで、わざとらしく笑いかけた。
「美味しい！ 本当にありがとう」
本当ですか！ と嬉しそうに笑うつくしに、一抹の嫉妬を覚えながら。
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虎倉瀬(プロフ) - この作品めちゃくちゃ好きです！！！！更新待ってます！！！！！ (2022年10月12日 0時) (
レス) id: 0804d1e466 (このIDを非表示/違反報告)
小雨(プロフ) - 霧野シュウさん» 面白いなんてありがとございます！とても嬉しいです。不定期更新ですが、完結させられるよう精一杯頑張りますね！ (2019年1月15日 21時) (レス) id: e8faf7cb28 (このIDを非表示/違反報告)
霧野シュウ(プロフ) - とても面白いです！更新頑張って下さい！！！ (2019年1月12日 11時) (レス) id: 3f23c4d3b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小雨 | 作成日時：2019年1月1日 1時
