優しすぎるあなたは。 (ページ12)

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次の日

ジェシーくんを初めてあしらった。

その後の記憶はなくて、右手に温もりを感じて目を開けた。

『…ん、なに？』

右手を見ると両手で私の手を握り眠る彼がいた。

どうして。ここまで優しいのだろうか。

手をそっと引き抜いて、彼に布団をかける。

時計を見ると朝の6時。

すごく早く起きた。

リビングに向かい、コーヒーを淹れる。

あれ、コーヒーどこだ。

棚を探しているときに、後ろからふわっと抱きつかれる。

「なんで起こしてくんないの。」

寝起きの低い声で、ぎゅっとしてくる。

『…ごめんね。』

あしらってごめん。
手を弾いてごめん。
勝手に傷ついてあなたが悪いようにしてごめん。
離してあげられなくてごめん。

「…コーヒー、ここだよ。」

私から離れて、用意してくれる。

あなたがずっとやってくれていたこと改めて感じる。

「何食べる？」

座っててよと促され、用意してくれる。
正直食べれる気がしなくて。
コーヒーだけでいいやと、窓の外の分厚い雲に隠れた朝日を見ながらそう答えた。

「…そっか。ちゃんと食べないと体壊すよ。」

『…うん。』

居づらくしたのは私だ。

『ジェシーくん。』

自分の分のトースターを焼く彼に、

『もうそろそろ離れよう。』

そういった。

「Aさん、無理してない？」

『もう、大丈夫、』

「俺のためとか、そんなこと思ってる？」

『ちがうよ、』

「ねえ、じゃあなんで？」

あと入れるだけのコーヒーも無視して、詰め寄られる。

『ジェシーくん、私たち、付き合ってないよ。一緒にいるだけ。だから離れることに理由なんていらないでしょ。』

「…っ、」

『もう、優吾くんのことも乗り越えた。し、今の仕事も延長せずに辞めようと思ってるの。』

「いつも、そうじゃん。」

『…なにが？』

「Aさんの辛いこと全部受け止めて、幸せになって欲しいと思ってるのに、俺のこと頼ってくれたこと、ある？」

「俺の自己満足に付き合わせて、最終的にこれだよ。Aさんが話してくれないのは、疲れてるからだって自分の中で決めつけて。」

「俺すっげえかっこわるい。」

『そんなことないよ、』

「あるでしょ。」

こんな彼にしたのは、どこでもない私だ。

「俺、Aさんのこと好きだよ。」

『ジェシーくん、それは、』

「俺から離れないでよ。」

いつのまにか、彼は私の目の前にいて、
言葉を発しようとする私の唇を捉えていた。