冷えた眼 (ページ8)

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教室

昨日のことは私の中では大きなことだったけど、それを知らないクラスメイトはいつものように騒いでる。

あ、生物、テストだったなと思ってノートを開いて問題を解く。

休み時間なんて話す人いないし、端っこにいれば平和に、

「A。」

平和に、

「おい。」

過ごせるはず、なんだけど…

『えっ、』

顔を上げてみると、目の前に目黒くん。

騒がしかったクラスは静かに私たちを見つめてる。

「勉強、教えて。」

『…ぇ、と』

私が答える前に、蓮が勉強！？明日雪でも降んじゃね！と騒ぎ立てる周り。女の子なんて特に面白くなさそう。

『わ、わたし、教えるのなんてしたことないから、』

「勉強できんじゃん。」

「ほら、蓮！困ってるから、私が教えてあげる！」

ほ、ほら、陽キャは陽キャで楽しんでください…
女の子は目黒くんに腕を絡めて話し始める。

「こんな、地味な子と話すとイケメンがイケメンじゃなくなるよお？」

「…。」

『…やっ、やっぱり周りの方に教えてもらった方が…』

「ほら！蓮！教えてあげるって！」

陰キャを使って遊ばないでよ。だんだん惨めになってきて、握ってたシャーペンが折れてしまいそう。

「…離せ。」

ドスの効いた低い声が聞こえた。怖くなって下を向くと、

「は？ノリ悪ー、」

女の子の足音が聞こえて、手のひらが頭に乗った。

「俺、お前に頼んでんだけど、返事は？」

少し目線を上げると、かがんで顔を覗かれていた。

“困っている人がいるなら助けたい。”

いつも断れない理由にする言葉。

『…私でよければ…』

誰に対しても蔑んだ目をするその冷たい眼が少し笑っているように見えた。

「ん。放課後、な。」

くしゃくしゃと撫でられると同時にチャイムが鳴り、先生が入ってきた。

なんでか少し、心が跳ねていた。