冷えた眼 (ページ13)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:95,426 hit

13 ページ13

多目的室

「聞いてもいい？」

阿部先輩の真前に座ったあと、優しく話しかけてくれた。

さっきあったこと、最初から話すと、「目黒ってクズだけど、中身はいい奴なんだよ。」と笑ってくれた。

『でも、大ちゃんが勘違いしたままで、』

「大事な“妹”に手出されて黙ってられる奴じゃないからなぁ。」

『手って…、何もされてないです。助けてくれた。』

『阿部先輩は、目黒くんと知り合いなんですよね？』

「真面目な俺があいつと知り合いなのが気になる？」

阿部先輩がにっこりと笑う。小さく頷くと大きな音を立ててドアが開いた。

「また今度ね。」小声でそう言われて、「佐久間、遅かったじゃん、氷あった？」とドアから入ってくる大ちゃんに声をかけた。

「まじ、俺の運動神経の悪さを恨むよ…」

かなり息が上がっていて、そこまで急いでくれたのかとうれしくなる。

『大ちゃん、ありがとうね。』

私がそう声をかけるとにゃはっと笑って「いつでもAちゃんのヒーローでいたいもん！」と言ってくれた。

それからいつものようにご飯を食べて、教室まで送ろうかと言ってくれた2人に大丈夫と答えて教室に戻った。

手首には氷水を置いて、ドアを開けると一気に視線を浴びる。

また何かされるのかと少し身構えながら席に着くと、さっきの静かさがなくなり教室が騒がしくなる。

5限目のチャイムがしばらくして鳴った。科目は化学で担当の先生が出欠をとる。

「あれ、目黒どこいった？」

先生の一言に「目黒くん、体調不良かな〜？？」と盛り上がる男子。女子のサイテーと言う声もセットだ。

そーゆーことだ。

“目黒はクズ”と阿部先輩が言ってた通り、やはり理解しがたい人だった。

「静かにー、プリント配るぞー。」

静かにならない教室に嫌気がさして、プリントを受け取ったあと窓の外を見つめた。

“でも、中身はいい奴”その言葉もわかった。
誰もいないグラウンドの端で何かをする人影。

小さな子猫を持ち上げて、遊んであげてる姿は無邪気な少年で。

歯を見せて笑う目黒くんはとても魅力的だった。