Sunday Morning − 2 ページ2
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誰かの呟きに女__Aは振り返る。声の主はベンチに座った中学生2人組の内どちらか一方のもので、故に自分に向けられたものではないのだと悟って気まずさから視線を外した。
女の子が前述した内容は記憶に新しい。
遡ること数時間前、画面共有可能な電子機器全般で電波障害が発生しログアウトしたかと思えば突如中継画面に切り替わり、五条術師と呪いの王による世紀末最大の対決を強制視聴することを余儀なくされたのだ。従って五条術師の敗退と呪霊側が王手をかけた状況は周知の事実であり、とうとう一縷の望みまで取り上げられた状態に混乱が混乱を呼び、戦闘に身を投じる術師達の死を皮切りに空には呪霊となった天元らしき黒い物体の出現で街はより一層カオスと化した。
犯罪はリターンがリスクを上回らないから誰も手をつけないのであって、法律とは警察力や軍事力が最低限ある事が前提だがインフラが破綻した公共機関では何の抑制にもならない。みな誰しもなりふり構っていられない様子で悲鳴を上げながら他人を押し退け逃げ惑い、車と人が接触する鋭い音が響き渡り、頭上からは火の粉が降り注ぎ、倒れた人を踏み越え駆け出した。
そんな惨状の中、当の中学生2人組は色違いのDiorのバッグを膝にのせ、間にミスタードーナツのボックスを挟み同じ画面を覗き込んでいる。
中学生という若さでDiorとスマホを与えられた子供の最期の望みは友達とチェーン店ドーナツを食べる事なのかと他意なき邪推をしてしまい「自分ってヤな奴だな」と気が滅入った。他人を気に掛ける労力を自身最期の人生に充てる気力ももはや残されていない。
「A!も〜〜探したよ」
「...ごめん」
「怪我はない?平気?」
「ふ。この状況で怪我の心配とかするんだ」
「当たり前だろ。君の彼氏なんだからさ」
肩で息を整えながら膝に手をつき屈託なく笑う彼との出逢いは3年前、彼がピアノラウンジで真っ赤なハイヒールを履いてMaroon5〈This Love〉を弾き語りながら「
A自身極めて常識枠の人間で、サブカルに心酔するタイプではないので第一印象が強烈な彼と必要以上に関わらないと誓ったはずが、いつしか惚れた腫れただので気付けば恋人同士に着陸し、現在も関係が続いているわけである。
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作者名:映国 | 作成日時:2024年2月26日 22時