青学にやってきたのは皇子様でした (ページ9)

今日:30 hit、昨日:2 hit、合計:29,104 hit

魔力操作ページ9

side手塚

不二が言った練という一年は越前より少し小柄な男だった

コートに入った練は空色の髪を靡かせ、真っ直ぐな瞳を俺に向け凛と立っていた

不二「構えないとだよ」

コートの外から不二が声をかければ慌てた様にラケットを構える

テニスは初心者と聞いたが俺を捉える瞳には何処か油断出来ない色を含ませていた

しかしそれも杞憂だったらしい
ゲームは一方的な流れで進んでいる

『...何で..球...吸い寄せて..』

手塚ゾーンを目の当たりにして動く事も忘れている練は三ゲーム程を落とした

「..期待するだけ無駄だったか..やはり初心者は初心者だな」

これ以上練習時間を無駄にする訳にはいかないと
早々に決着を付ける為サーブを打つ。それを練が打ち返し、手塚ゾーンで吸い寄せて打ち返す

『...らぁっ！』

次の瞬間
練の腕がしなったかと思えば今までとは格段違う鋭く重い打球が返って来る

「っ..！？」

ラケットで捉えたが、ボールのあまりの重さに
俺の手からラケットが弾き飛ばされた

カランカランと無情な音を響かせラケットが転がる

「...」

しんと静まり返ったコートの上で向かい側に立つ練に視線を移せば、彼はにこやかに微笑んでいた

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
sideA

引き寄せられる球をどうやって引き寄せさせないか考えていた時、引き寄せてから弾かせればいいと思った

だから俺はらけっとに魔力を通した

魔力操作の一種
白龍殿から教えて貰った魔力を纏わせる技だ

本来なら武器に纏わせる魔力を同じ原理でらけっとに纏わせた。すれば球は威力を増して飛んで行き、男の人の手に握られていたらけっとを弾き飛ばした

『少しやりすぎた..』

もっと薄く纏わせないと..って思ってたら
向こうから相手をしてた人が歩いてくる

...何かやらかしてしまっただろうか
煌帝国に泥を塗る訳にはいかない..どうしよう

「練、本当にテニス初心者か」

あれこれ考えていたらいきなり聞かれた

『..初心者です』

「嘘じゃないだろうな」

『嘘をつく理由がありません』

むしろ嘘をつく理由を聞きたい
そんな事しても損しかないじゃないか

「..練、何という？」

『練Aと申します』

「あ、あぁ..わかったから頭をあげてくれ」

..駄目だ。何時もの癖でやってしまうが
どうやらこちらの世界ではあまり良い行動ではないらしい

俺は大人しく言われた通りに頭をあげた

「練、お前はテニス部に入れ」

越前「は？」

俺が答えるより先に
背後から聞き覚えのある声がした