９７ 過ぎる半年 ページ6
次の日から、私はほぼ毎日ピンク君に会いに行った。
理由は思い出せないけれど、私は相当ピンク君を気に入っていたんだと思う。
ピンク君はいつも窓際に座っていて、私も看護師さんに見つかるまではそこに座ってお喋りをした。
お喋りと言っても、私の問い掛けにピンク君が頷くぐらいだったが…。
何度怒られても性懲りも無く、私はピンク君の元へと通う。
「また来た…。ほんとに飽きないね」
暫くすると、ピンク君も呆れたのか話をしてくれる様になった。
少しずつ表情も柔らかになって行く彼を見るのが、私は楽しかった。
時にはいたずらをしたり、看護師さんから逃げたりもした。
「こらー！待ちなさい、Aちゃん！」
『いーやー！行こ、ピンク君！』
「えっ、えっ！？」
因みに、そのほとんどは私がピンク君の手を引っ張ってやった事だった。
「……こ、こんな事していいの」
『いいの！楽しいじゃん！』
幼心ながら、ピンク君のアレスなんちゃらの話やお母さんがうんたらの話を聞いて、元気付けようとしていたのだろう。
・
・
ピンク君と出会ってちょうど半年となる秋終わり頃、ピンク君は、この病院を出る事になった。
後で分かった話によると、検査が終わって本格的にアレスの施設に移る為だったらしい。
その前日、私はピンク君が病院を出てしまう事を知った。
『えー！？ピンク君、明日からいなくなっちゃうの！？』
「うん」
『そっかあ…』
別れには、正直慣れている。
今まで、多くの友達を空にも外にも見送って来た。
ただ、この時は一段と寂しかった。
私にとっては、一番の友達がいなくなってしまう事と同じだったから。
屋上から二人で空を仰ぐ。
ピンク君は、徐に口を開いた。
「ねえ、Aはさ、ここにいて絶望していないの？」
『ぜつぼう…？なあにそれ』
「自分の未来を楽しみだと思える？」
『思えるよ！こんなところ早くでて、学校に通いたいの！』
「！」
・
・
そして、次の日。
朝早く病院を出て迎えの車を待つピンク君を、私は窓の上から見ていた。
本当は伝えたい言葉を幾つも用意したけれど、いざとなると下に降りる事さえ出来ない。
まだ、名前を聞いていなかった
まだ、一緒に遊びたかった
まだ、まだ、まだ…
いきたい、あいに、いきたい。
黒塗りの車が病院へと走って来る。
私は、考えるよりも前に走り出した。
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通りすがりのジンギスカン(プロフ) - ありがとうございます!更新楽しみにしています! (2023年1月3日 0時) (
レス) id: 8ec3ac3ee0 (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - 通りすがりのジンギスカンさん» はじめまして！コメントありがとうございます。楽しく読んで下さっていると聞き、とても嬉しいです。パスワード送らせていただきますね！これからもよろしくお願い致します。 (2023年1月2日 22時) (レス) id: 40828a89fc (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりのジンギスカン(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく読んでます!続きが気になるので、良ければパスワードを教えて頂けませんか? (2023年1月2日 0時) (レス) id: 8ec3ac3ee0 (このIDを非表示/違反報告)
加茂&夏油の嫁(プロフ) - 花鈴萌さん» こちらこそです！更新楽しみにしています！ (2022年12月31日 5時) (レス) id: ef07d69be6 (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - 加茂&夏油の嫁さん» はじめまして、ご指摘ありがとうございます。すみません単なるミスです。なぜ今まで気づかなかったのか……！ただ今修正しました。面白いと言って頂けて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願い致します！ (2022年12月31日 5時) (レス) @page20 id: 40828a89fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花鈴萌 | 作成日時：2020年9月19日 10時
