９６ ピンク君 ページ5
『ねえ』
そう言って、男の子の肩を軽く叩く。
少し体をびくりと震わせた男の子はゆっくりと振り向いた。
私は、彼に向かってにこりと笑う。
『初めまして！私、源A！』
「……。」
返事は無い。
その子はただ、虚ろな目で私を見つめてくるだけ。
光の無い、言い換えるならば死んだ様な眼。
『あれ？はじめましてー…』
最初、あまりにも表情が変わらないので、私は聞こえていないのだと思った。
或いは、話せないのかと。
…が、何度話掛けても応えが返って来ない。
それでも、興味の絶えない私は会話を続けた。
『ねえ、ねえ！あなた、新入りなの？名前は？』
『そのおもちゃ、好きなの？なんのおもちゃー？』
『どこから来たのー？』
どれ位経っただろうか。
じっと私を見ていた男の子が、ぼそりと呟いた。
「……よく喋るね」
『！！うん、私喋るの大好きだもん！』
喋ってくれた。
私は、心の中でガッツポーズをする。
暫しの沈黙の後、男の子は再び口を開いた。
「君は、僕に興味があるの……？」
『うん！だって、外から来たんでしょ！ねえねえ、外ってどんな感じ？』
「…君は変わってるね。僕みたいなつまらない子どもに」
「外ってどんな感じ」という私の質問には答えず、男の子は言う。
私は質問をスルーされた事よりも、自分の事をつまらないと自嘲したその子を不思議に思った。
『ねえ、なんでつまらないの？全然つまらなくないと思うよ！』
「…つまらないさ。僕は……僕はね、母親さえ相手にされなかったんだ」
『でも、私は興味深々だよ！』
間髪入れずに声を上げた私に、それまで表情の変わらなかった男の子も驚いたのか目を大きく見開く。
思っていた反応とは違ったのだろう。
私は、更に男の子に尋ねた。
『ねえ、名前は？』
「…いいたくない。それに、あんな名前、きらいだ」
…なんで名前がきらいなんだろう。
一瞬気になったものの、幼い事もあって深く考えられなかった私はまぁいっかとすぐに切り替える。
そして、目に入った彼のピンク色の髪の毛を見て勝手にあだ名をつけた。
『じゃあ、あなたピンク君ね！』
「…ピンク君。へんなの」
男の子は、特に怒ることも無く小さく頷く。
その様子を見て、私も小さく笑った。
窓から春風が吹き込む。
ピンク君と、よく喋る私。
これが私達の出会いだった。
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通りすがりのジンギスカン(プロフ) - ありがとうございます!更新楽しみにしています! (2023年1月3日 0時) (
レス) id: 8ec3ac3ee0 (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - 通りすがりのジンギスカンさん» はじめまして！コメントありがとうございます。楽しく読んで下さっていると聞き、とても嬉しいです。パスワード送らせていただきますね！これからもよろしくお願い致します。 (2023年1月2日 22時) (レス) id: 40828a89fc (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりのジンギスカン(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく読んでます!続きが気になるので、良ければパスワードを教えて頂けませんか? (2023年1月2日 0時) (レス) id: 8ec3ac3ee0 (このIDを非表示/違反報告)
加茂&夏油の嫁(プロフ) - 花鈴萌さん» こちらこそです！更新楽しみにしています！ (2022年12月31日 5時) (レス) id: ef07d69be6 (このIDを非表示/違反報告)
花鈴萌(プロフ) - 加茂&夏油の嫁さん» はじめまして、ご指摘ありがとうございます。すみません単なるミスです。なぜ今まで気づかなかったのか……！ただ今修正しました。面白いと言って頂けて本当に嬉しいです。これからもよろしくお願い致します！ (2022年12月31日 5時) (レス) @page20 id: 40828a89fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花鈴萌 | 作成日時：2020年9月19日 10時
