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最初は、なんだっけ。
同じ学部で仲良くなった友達と一緒に同じサークルに入って、
精力的なほどは行ってなかったけど、その友達と同じ高校の男の子がいたから、なんとなくそこらへんを中心に時々飲みに行くメンバーみたいなのが出来てきて。
それだけだった。
のんちゃんは別に、特別仲良くなんてなくて、二人で話すようなこともない。
ずっと、何人かのうちの一人でしかなかった。お互いに。
「一緒に帰る？」
それは雨の日のこと。
5限まで授業があって、空はただでさえ薄暗いのにその天気のせいで夜に近いような気がしてくる、夕方。
パラパラかと思った雨は意外と強くて、校舎を出てすぐ立ち止まる。
傘、買うか…
そう思って校舎に引き返そうとしたら、ちょうど校舎から出てきたのんちゃんと目が合った。
「傘ある？」
「パクられた」
「最悪やな」
目を伏せてはは、と笑う顔を綺麗だな、なんてぼーっと見ていた。
睫毛が長くて、目元が濃く見える。
「購買行こうかなって思ってたとこ」
「もったいなくない？一緒に帰ろうや」
そう言って彼が広げたビニール傘は、やたらと大きい。
「おっきいね」
「な、なんか家にあったやつすげえデカかった。から、入ってったらええやん」
変に遠慮する方が恥ずかしいような気がして、ありがとう、と傘の下に入った。
「家遠いんだっけ」
「いやそこまでかな。電車で一時間くらい」
「私からしたら遠い」
「あ、まってそうやん、一人暮らし？」
「今更？」
吹き出したら、それな、とのんちゃんも笑う。
「いや知ってはいたけど。忘れてた」
「まあ忘れるよね」
「ごめん、バリバリ駅向かっててんけど。こっちちゃう？」
「いや、大丈夫だよ。駅からわりと近いから」
「えー？」
「えー、とは…」
「せっかくここまで濡れんと来たのにそんな優しさを踏みにじるようなこと言いますか」
「えっ、踏みにじってる？」
「踏み荒らしてる」
家まで送るから、道教えて。
その優しさは本物だったし、下心もなかったし、少しソワソワするのだって当たり前のことだった。
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菜 SAI(プロフ) - はじめまして。とってもいいお話でした…！ちょっとヒリヒリしたり、まっすぐだったり、、読みながら感情がたくさん動きました。のんちゃんの重い愛が重すぎない表現で、重くて良かったです！！！ありがとうございました。 (2022年9月3日 3時) (
レス) @page20 id: 671454c607 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花音
| 作成日時：2022年8月18日 21時
