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「……それ、手遅れちゃん」
「……さあ？」
あまりにも優しく指の背で頬を撫でられるから、なんだか苦しくて堪らなくなった。
首筋に顔を埋められて、肩との境目に唇が触れる。
「もう会わんて方がよっぽど無理」
「……じゃあ、北海道から来てくれる？」
「ブラジルからでも行く」
ほんとかな〜、と茶化したらまた横になった彼にぎゅうっと腕を回される。
首筋にかかる笑い声がくすぐったい。
「ったりまえやん」
「……」
「愛やろ」
「……愛なの…？それは」
「じゃなかったら何？」
「ウ〜ン」
首の下にある右腕を曲げて私の髪を撫でたのんちゃんが、探るようにして何度か耳に髪をかける。
「聞いて」
「聞いてるよ」
「……俺は、健やかなるときも病めるときも、Aだけで良いと思ってんねんで」
「……」
「待って、だけ"で"は違う、Aだけ"が"」
「……ふふ」
「……適当やって思ってる？」
「そんなことは、ない、気もするけど」
「…けど？」
「でもやっぱ、…怖いのかな」
「俺も怖いわ」
「…そう？」
うん、と掠れた声が耳に届く。
「手放したくないなあって、もうずっと怖い」
それはハッキリとした話し方なのに、ちょっと自信なさげに聞こえた。
「一緒に、おってよ」
「……」
「愛の、告白。合ってる？」
「……わたしもわかんない」
腕の中でくるりと反転して、正面からのんちゃんの腰に手を回した。
伝わる体温が熱い。
のんちゃんの手が私の後ろ髪を何度も撫でる。
「毎日、なんもせんと朝迎える？」
「んふ、そういうことなの」
「たぶん違う」
「……じゃあ、明日一緒に朝ごはん食べよう」
「うん、…おれ作る、味噌汁くらいなら…」
「最高、ありがとう」
「明後日は、Aちゃんね」
「うん」
それは、絶望にも似てる。
悔しいほど、苦しいほど。
もうこれ以上の人に出会うなんて、あり得ないのでしょう。
その甘やかな絶望に降伏して、富めるときも貧しいときも、あなただけがいいと願ってしまったなら、
ここにあるのは何？
私達はこどもだから形を知らなくて、ずっと、探してたのかなあ。
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菜 SAI(プロフ) - はじめまして。とってもいいお話でした…！ちょっとヒリヒリしたり、まっすぐだったり、、読みながら感情がたくさん動きました。のんちゃんの重い愛が重すぎない表現で、重くて良かったです！！！ありがとうございました。 (2022年9月3日 3時) (
レス) @page20 id: 671454c607 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花音
| 作成日時：2022年8月18日 21時
