元天才リベロは烏野のマネージャー 12

550.限界 ページ25

宮治side


ﾀﾝｯ…




ピッ、ピーーーッ！！


試合終了のホイッスル…


負けた…


Aが手を伸ばした5cm先…


ボールが落ちた…


伸ばした手は…


Aの思いは…


俺らの思いは…


届かんかった…



なかなか起き上がることが出来ないA


女1「…頑張れ」


隣の席の女子の漏れたような声…


せや…

頑張れや


こんなとこで終わってええはずないやん


…この後、もう一試合あんねやろ？


けど…

味方の手も借りず、立ち上がったAの顔は、魂が抜けたような…

全てが終わってしまったような…


…そんな顔やった


…まさか



ここが？



ここが…Aの限界？…


嘘やろ…



角名「…最後…俺らの試合の最後とよく似てたね」

治「は？」

角名「…侑と治の完璧な速攻を、完璧にブロックされて…銀が取りに走って…目の前で落ちた…Aちゃんも同じ…気づいたんじゃない？…『下がれ』って声がする前に、Aちゃん、取りに走ってたでしょ」


…アレは拾うのが難しいボールやった


けど…


"Aにとっては拾わなあかん"


そんなボールやった…


"天才リベロ"


それが中学時代のAを苦しめていた言葉であり…

Aが嫌いになったバレーから離れられなかった理由でもある言葉なんやから…


傍から見たら、たった1本…

最後の1点のレシーブが出来んかっただけや…


けど…

Aにとって、あのローテなら…


"自分が拾わなければならなかったボール"


になる…


今日のAは狙われた挙句、1人で戦おうとムキになり、空回ってた…

途中からは仲間を頼るプレーに変わったけど…


あの1本は…


"拾わなければ、自分がコートにいる価値はない"


そう思っても不思議やない1本やった…


実際はそんな事ないんやけど…

責任感の強い奴ほど、そう思ってしまうんも事実や…


これ、この後の3決、大丈夫…

やないやろな…

このままやったらアカンわ…


男1「…なぁ、治」

治「ん？」

男1「…あの子の試合、もう終わりなんか？」


恐る恐る聞いてくるクラスメイト…


治「…いや…午後から3決あるけど」

男2「それほんまか！？」


1人やない…

クラスみんなの顔色がパッと明るくなる


男3「なぁ！先生！午後の試合も俺みたい！」

女1「ええやろ！？どうせ自習なんやし！！」

男3「俺らバレー好きやから！！」

女2「先生、お願い！！」


なぁA…

はよ立ち直れや…

俺らみんな、お前のこと、応援してんねんで

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