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「結城さん！灰原！」
灰原くんを担いで麓まで下りる。
…嘘。若干引きずってます。
180センチはある男子高校生を担ぐのは無理な話だった。
灰原くんを補助監督に預けて、私は七海くんのもとへ。
「…灰原は？」
「気を失ってるだけ。ちゃんと手当を受ければすぐ回復すると思う。」
私が他者にも反転術式を使えればよかったんだけど。
よかった、と小さく呟いた七海くん。私も二人を助けられてホッとした
のも束の間
「結城さん！灰原さんが！」
応急処置を任せていた補助監督が声を上げる。
心臓が音を立てた。
私が駆けつけるのが一足遅かった？
息はしていたけど出血が酷かったし…
もしかして見えていないだけで致命傷を負っていた？内臓をやられていた？
まさか、そんな…灰原くん…！！
「あれ、七海…と、Aさん！？」
「え？」
そこには上体を起こしている灰原くんが。
うそでしょ。
「大丈夫、なの？」
「はい、頭は痛いけど、俺生きて…？」
「よかった…頑張ったね！灰原くん！」
「いででで！！」
「あっ。ごめん。」
喜びのあまり駆け寄って両肩を掴んだときの揺れが傷に響いたらしい。
ごめんね。
兎にも角にも、よくこの大怪我で頭が痛い程度で済んだものだ。
「へへ、体は丈夫なんで！ところでAさん何で？七海が呼んだの？」
「いえ、私は何も。貴女は高専にいるはずでは？」
予知夢を見た、なんて信じてもらえないよな。
「なんとなく？」
「はい？」
「二人がピンチだ！って思ったみたいな…」
流れる沈黙と彼らの視線が痛い。
「…ふ。」
「七海くん？」
「あはは！」
「灰原くんまで！？」
笑い出す二人。
変なやつ認定された？それは辛いな。
「えっと…呆れた？」
「命を救われておいてそんなこと思うわけないでしょう。本当に不思議な人ですね。」
「ピンチに駆けつけるなんてかっこいいな。さすがです！」
どうやら呆れられたわけでは無さそうだ。なんとか先輩としての威厳は保たれた。
「俺も強くな、って…」
「灰原くん！？」
立ちあがろうとしてよろめいた灰原くんを間一髪で受け止める。
「怪我人が無理をするな。」
「怪我人は七海くんもでしょ。高専に戻ろう。」
こうして私たちを乗せた車は高専へ向かう。助手席で背もたれに体重をかけ、息をついた。
さて、関係ない任務に勝手に首を突っ込んだこと、どうやって夜蛾先生に説明しようか。
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作者名：i-su | 作成日時：2023年9月27日 17時
