図書室の虫。【em】 ページ3
この学校の図書室はとても広い。
でも、誰も来ない。
現代、本は電子書籍が主流になって、現物を持つことが少なくなった。
そりゃあそうだろう。こんな広い本屋で探すよりもネットで調べた方が早い。
でも私は図書室へ行く。別に借りることが目的ではない。
図書室に何時も居る“彼”に会うためだ。
ガラリ、立て付けの悪い扉を開けると中は相も変わらず埃が充満している。
慣れた足取りで奥へずんずん進んでいくと本の山に埋もれ、眠る彼がそこに居た。
適当に本を掻き分けて眠っている本人の肩を揺さぶり起こす。
「起きてください、エミさん。」
んん、と呻き声をあげながら当の本人は目を開ける。
色素の薄いその瞳が、私を写す。
em「あ、おはようございます。Aさん。」
窓を開けながら私はそれに「おそようございます、もう放課後ですよ。」と返す。
彼は少し恥ずかしそうにえへへ。と頬を掻きながら「今、紅茶入れますね。」と立ち上がった。
途端、ドカッと大きな音がして振り返ると見事にこけて、床にしりもちをついているエミさんが居た。
.
エミさんとの出会いは一年前。
私が友達と喧嘩をして誰も来ないと言われている図書室へと足を踏み入れたことがきっかけだった。
彼は突然来た私に手を差し伸べてくれ、話を聞いて尚且つアドバイスもしてくれたのだ。
次に図書室へ来たとき、お礼を述べると「いえいえ。仲直りが出来たのならよかったです。友人は大切にしてくださいね。」と紳士対応をしてくれた。
その後はいろんな本の話なんかを聴かせてくれた、彼の話は面白く、私の知らない本の話なんかも読み聞かせてくれたりしたのだ。
とはいえ、彼は謎だらけなのだ。
歳は私より年上なのは確かなのだが、いつも此処に居る。
それ以外知らない。
そう、何も知らないのだ。
だから今日、思い切って聞こうと思う。
ふんす、と一人鼻を鳴らしながら紅茶を淹れているエミさんが来るのを待っていた。
.
紅茶を淹れてきてくれたエミさんに今日はこんな話が聞きたいな。と話題を振る。
エミさんはじゃあこんな話はどうか。と話し出してくれる。
何個か話をしてくれた後、紅茶のカップを口につけながら話を切り出す。
「あのね、エミさん。私、エミさんの話。聞きたいな。」
em「私の……。」
うん。返すと。
私は只の、本の虫ですよ。と返される。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お豆腐ゥ - エミさァァァァン…(泣)え、めっちや面白い好き(( (2020年1月21日 16時) (
レス) id: ade8211ab6 (このIDを非表示/違反報告)
混ぜわかめ(プロフ) - 秋雨の秋桜さん» ああありがとうございます！！ｍｎちゃんの話は一発目だから凝りたいなぁって考えた結果ああなりました…ｗ (2020年1月16日 19時) (レス) id: 09f3cb8944 (このIDを非表示/違反報告)
秋雨の秋桜(プロフ) - んえっ…すげぇ…osさんの話見た時びっくりしちゃいました…考えれば考えるほど奥が深くなっていく作品ですね！面白かったです！ (2020年1月7日 20時) (レス) id: a2366f890d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：混ぜわかめ | 作成日時：2020年1月7日 2時
